2021 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on Charles L. Black's Theory of Judicial Review
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19K23152
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川鍋 健 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師(任期付) (90845661)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | チャールズ・ブラック / 違憲審査制 / 人民主権 / イェール学派 / 日米比較 / 裁判所による違憲審査の民主的正当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ブラックの主張した、人民主権に依拠する違憲審査制、という主張が、現代アメリカ憲法学において人民主権論を展開するイェール学派に継承されていることを明らかにした。また、その主張の日本憲法への適用可能性も論じた。参照、川鍋健「アメリカ憲法学における人民主権論と日本憲法学への示唆」、憲法研究8号(2021年)、155頁以下、査読あり。 また、2020年度に本研究費の援助を受けた研究報告、川鍋健「憲法学とその目的:書評、エイドリアン・ヴァーミュール(吉良貴之訳)『リスクの立憲主義』、勁草書房、2019年」、『リスクの立憲主義』オンライン合評会、2020年7月を論文化した。参照、川鍋健「憲法学とその目的」、けいそうビブリオフィル、2021年。 加えて、2021年度は、ブラックのような人民主権の主張に依拠した違憲審査制という理念は、アメリカでは具体的な裁判所制度としてどう構成されているか、ということについて、研究した。特に裁判官の任免制度について注目し、アメリカでの裁判官の民主的答責性の問題意識を見出した。そして、アメリカにおける違憲審査制の背後にある人民主権の理念を、制度の側面からより具体的に描き出し、また、そのことを踏まえた日米の裁判所制度、裁判官制度の比較を通じて、日本憲法学への示唆を明らかにする論文が2022年度に公刊予定である。 研究期間全体を通じて、裁判所による違憲審査について、人々が直接政治に影響を与える制度として人民主権の実現のために不可欠な制度であるとするチャールズ・L・ブラックの違憲審査制論の意義を明らかにした。また、そのことを通じて、裁判所による違憲審査が、民主的な政治体制において、民主的な信頼を獲得するためには、どのようなあり方を模索すべきか、ということを明らかにした。
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