2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23155
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 陽奈子 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (90848095)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 国家機関間機構 / GANHRI / 列国議会同盟(IPU) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際人権法の実現過程において、人権条約機関や国連人権理事会との関係で、個別の国家機関を構成員とする「国家機関間機構」が果たす役割について包括的に検証したうえで、その検証結果を土台として、国家機関間機構の役割を国際法上適切に位置づけ、統一的・整合的に説明することを可能にするための理論的枠組みを探究することである。 こうした目的のもと、本年度は、各国家機関間機構が、人権条約機関および国連人権理事会との関係で、国際人権法の実現にいかなる役割を果たしているかを実証的に分析する作業を行った。とくに、各国の国内人権機関(NHRI)を構成員とする、グローバル国内人権機関連盟(GANHRI)について重点的な調査を行った。この結果、GANHRIの内部機関である認証小委員会(SCA)が、「パリ原則」の遵守の程度に基づく、NHRIの認証(遵守している場合にはA資格、部分的な遵守の場合にはB資格、不遵守の場合にはC資格を付与する)を行っており、そうした認証制度が、国際人権法の実効性および正統性の向上に寄与していること、そして、そうした認証制度がここ数年の間に大きな発展を遂げていることを明らかにした。人権条約機関や国連人権理事会も、GANHRIによる認証結果を有権的なものとして承認している。このようなGANHRIの実践を通じて、国際人権法におけるNHRIの固有の地位が確立されつつあるといえる。 こうした研究成果の一部は、研究論文として、雑誌『法学論叢』に掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」の欄で述べた通り、国家機関間機構の役割を実証的に分析する作業の一部を終えることができた点では、順調に進んでいるといえる。しかし、以下二点の事情を考慮し、「やや遅れている」とした。 第一に、2019年10月に第一子を出産したことに伴い、産休・育休を合計約6か月取得し、その分、研究の進行が後ろ倒しになった。また、妊娠に伴い、海外でのヒアリング調査等を延期した。ただし、スカイプを利用して海外セミナーで報告するなど、妊娠・出産による影響を最小限に抑えるための努力を行った。 第二に、新型コロナウイルスの拡大防止のため、出席を予定していたいくつかの会合が中止となり、情報収集の機会が減少した。また、3月に予定されていた研究報告が延期となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に引き続き、国家機関間機構の役割に関する実証的分析を継続し、完成させる。そのうえで、「国家」を構成員とする国際機構を対象としてきた、従来の国際機構に関する国際法理論を参照しつつ、国家機関間機構による実践が、いかなる法的・理論的根拠に基づくのか、また、個別の国家機関が国家機関間機構の決議や勧告を履行しない場合、いかなる法的帰結が生じるのか、といった理論的問題の解明を目指す。研究成果については、国内外の研究会等において、必要に応じてZoom等の遠隔会議システムを利用し、研究報告を積極的に行ったうえで、そのフィードバックを踏まえて、論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
(1)妊娠に伴い、海外出張および国内遠方の学会等への出席を取りやめたこと、(2)出産・育児に伴い、産休・育休中の約6か月は経費を使用しなかったこと、(3)新型コロナウイルスの対策として、研究会等が中止・延期されたこと、の3点の理由により、研究費の一部を次年度に繰り越すこととした。 この繰越金については、今年度行うことのできなかった出張のための旅費、および産休・育休中に出版された書籍等の購入費として使用したい。
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