2019 Fiscal Year Research-status Report
Legislative Control over War Powers
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19K23162
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
望月 穂貴 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (90844126)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 憲法 / 権力分立 / 安全保障 / 戦争権限 / 議会制 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ合衆国憲法は戦争に関する権限を連邦議会と大統領の両者に分担させているが、その分配は不明確なものを残している。また、戦争権限はしばしば法的問題としてよりは、政治的調整として取り扱われている。本研究では、1973年戦争権限法を梃子にした立法的・司法的統制に限らず、様々な議会統制の手法を検討することが目的であった。方法としては、議会統制に関する文献調査および最新の安全保障政策についての現地調査を予定していた。 2019年度は、文献調査の手法によって、主に冷戦下の連邦議会の秘密軍事作戦の統制について検討した。冷戦下に発達した秘密軍事作戦は、単に作戦用兵上の秘密ではなく、現地武装勢力を秘密裏に援助して軍事作戦を行うものがある。合衆国軍を投入しないため、議会の軍編制権を回避できるのである(1973年戦争権限法も、正規軍のみを対象としている)。一方、連邦議会はこうした準軍事活動の実態を、国政調査権によって強力に調査してきた。そのうえで、不適切と判断した軍事活動への支出を禁ずるという方法によって統制を図ってきた。また、連邦議会は、秘密活動の情報を常に議会に共有することを求める立法も行った(1981年情報授権法)。秘密情報の共有によって、執行権に偏りがちな安全保障政策のパワーバランスを補正する試みは、権力の「抑制と均衡」を補完する点で評価できる。一方で、これらの手法が執行権によって無視されるケース(イラン・コントラ事件)があり、意義と限界についてさらに慎重な検討が必要である。 なお、最近の連邦議会はトランプ政権に対して1973年戦争権限法を用いた統制を試みるなどの動きを見せており、最近の安全保障政策に関する現地調査を行うことを計画していたが、コロナ問題のため果たすことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記概要のうち、文献調査に関しては順調に行ったが、現地調査について、コロナ問題のため果たせていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に検討した部分については、学会・研究会で報告し、公表することを目標とする。また、冷戦後の連邦議会の軍事秘密統制についても引き続き検討を行う。さらに、2020年に発生した米国内の抗議活動では、合衆国軍の国内投入が一時検討された。本研究では、対外的な軍事作戦を念頭においてきたが、このような情勢を受けて、対内的な軍の投入についても検討を加えたい。なお、情勢が落ち着き次第、19年度に果たせなかった現地調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ問題で現地調査が行えなかったため。情勢が落ち着き次第、現地調査で使用する。
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