2021 Fiscal Year Research-status Report
Hobbes's Idea of Pluralistic Political System
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19K23178
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
上田 悠久 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (70844546)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ホッブズ / ヒューム / 助言 / 多元性 / 専制 / 宗教 / 政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ホッブズの多元的政体論そのものの更なる理解に努めるとともに、同時代の17世紀および次の18世紀において彼の議論がどのように受容され、あるいは「誤解」されたのか検討を行った。第一に、前年度末に出版した単著『〈助言者〉ホッブズの政治学』にかんする書評会が、2021年10月の社会思想史学会研究大会のプログラムとして開催され、著者として評者への応答を行った。本書評会のためにこれまでの研究を見直し、また評者からのコメントに答えるなかで、ホッブズの政体論の中に「多元性」を見いだすためには、同時代の政治状況に対しホッブズがいかに呼応したのか、そして助言論の探究だけで多元性を見いだせるのかなど、更なる議論が必要であることがわかった。第二に、2021年8月の「啓蒙と政治研究会」において、ホッブズとデイヴィッド・ヒュームの政治論および宗教論を「マナーズ」に注目して比較する研究発表を行なったが、この過程で、ホッブズの議論が専制(あるいは「絶対主義」)擁護の議論として捉えられるようになったのはなぜなのかに関心を持った。17世紀、および次の18世紀におけるホッブズ受容を調査したところ、ホッブズが『リヴァイアサン』を出版した当初は必ずしも専制擁護者とは見なされていなかったこと、同時代に徐々に専制擁護者のイメージが形成されたこと、そして18世紀の「啓蒙思想」の時代にそのイメージが固定化していったことが見えてきた。この内容については、当該研究発表に部分的に盛り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍において海外渡航は依然として容易ではないため、リサーチのための海外出張は前年度に引き続き断念した。また緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴い行動制限が生じたため、代替措置として考えていた国内出張も難しくなった。さらに新規担当科目を前期、後期とも複数抱え、準備等に相当の時間を使うことになった。このため、限られた資料と時間の中で研究せざるを得ず、外部での発表は限定的となり、論文の投稿はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた海外渡航は所属機関の活動基準に照らしても困難であるため、引き続き国内での活動を中心に行っていきたい。新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、本年度は国内において、資料収集に加え、対面での研究会参加や打ち合わせなどを積極的に行っていきたい。そして研究期間の再延長に伴い時間的余裕が生まれたので、論文の執筆および投稿を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において海外渡航は依然として困難であり、リサーチのための海外出張は前年度に引き続き断念した。また緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴い行動制限が生じたため、代替措置として考えていた国内出張もできなかった。このため、予定していた旅費を使うことがなかった。次年度は、海外渡航は困難であるものの、国内出張などに旅費を使用したい。また研究関心の広がりに伴い、新たな図書の購入も必要になったので、そちらに物品費を使用したい。
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