2023 Fiscal Year Annual Research Report
Hobbes's Idea of Pluralistic Political System
Project/Area Number |
19K23178
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
上田 悠久 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (70844546)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | ホッブズ / ヒューム / アリストテレス / 専制 / 暴政 / 習俗 / 実践 / 方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、ホッブズの多元的政体論について多角的に検討した。まずホッブズが、商業活動を政体の中に組み込み、自律的なコモンウェルスの維持運営を企図したことを、勤労と慈善の議論を軸に検討し、学会で報告した。次に、前年度に引き続きホッブズの議論を「啓蒙」の観点から再検討し、学会報告を行った。さらに、デイヴィッド・ヒュームとの比較検討を暴政と専制の観点から検討し、紀要論文にまとめた。時局に応じて暴政や専制論を展開し、支配の根幹となるマナーズ(習俗)に言及するホッブズの暴政擁護者ならざる側面を示すことができた。一方アリストテレスの方法論や実践論との比較検討に関する英語共著論文は、海外ジャーナルに投稿したもののリジェクトされてしまったので、修正のうえ再投稿する予定である。 コロナ禍により研究期間が当初の1年半から4年半に延びてしまったが、この延長により研究期間全体を通して複数の成果を上げることができた。最も重要な成果として、単著『〈助言者〉ホッブズの政治学』を上梓し、絶対主義者と言われてきたホッブズの新たな側面を示すことができた。本書は、3つの書評(うち2件は学会誌)にとりあげられ、また書評会も開催されるなど、ホッブズ像を再検討した政治思想史研究として評価された。もっとも、絶対的主権者に対する助言者の存在を示すホッブズが、どこまで「多元的」政体論者と言えるのかは、今後も検討しなければならない。それでも、ホッブズのコモンウェルス論を、法律家や商人といった多元的アクターの存在を通じて多角的に検討することができた。そしてヒュームやアリストテレスといった異なる時代の思想との比較検討を通じて、ホッブズの政体論の系譜について考察することができた。
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