2019 Fiscal Year Research-status Report
タイの「自主外交」の歴史的・文化的検討―「脅威」と「親戚」の間で苦悩する対中認識
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19K23179
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
タンシンマンコン パッタジット 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (10844136)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | タイ / 東南アジア / ASEAN / 中国認識 / 外交文化 / 国際関係史 / 対外認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1960 年代から 2010 年代までの、歴代の指導者、軍部、メディア、 知識人、財界人などの意見を通して、タイ社会における多様な中国認識を追跡することで、その変遷をもたらした要因と中国認識の特徴を明らかにし、対外政策の形成にどのように影響したのかを究明することである。また、タイの人間、社会、国家間関係の特徴を「外交文化」として究明し、タイの「外交文化」が対中国関係にどのように影響したのかを明らかにすることである。 申請者は修士課程と博士課程において1960ー2000年のタイの対日観、対中観を研究していた。その研究の完成度を高めるために、申請者は2019年度において、その内容を日本及び海外の学会、シンポジウムで計6回発表した。日本や海外の学会で報告したことで、高い知見を有した専門家と交流することができ、専門家から有益なフィードバックを得た。筆者は、それらのフィードバックに基づいて、内容を充実させ、論文という形で学会誌や論文集に投稿した。その結果、2020年に論文3編を雑誌に掲載することが決定した。 2000年以降の内容に関して、申請者は2019年8ー;9月の間にタイのバンコクを訪問し、研究の資料として用いる外務省の外交記録、タイの研究機関誌、論文集、週刊雑誌、新聞記事、学術論文、書籍などを収集した。また、タイの対外認識を反映している高校の歴史教科書も手に入れた。そして、インタビューの対象であるバンコクとチェンマイの大学の教授を訪問し、インタビュー実施の準備も整えたため、2020年度にインタビューを継続したいと考えている。 また、タイの外交文化の特徴を明らかにするために分析視点をタイに限定せず、ASEAN諸国の中国認識や日本認識を比較することも必要であるため、初期段階の考察として、申請者は2019年度に東南アジア10か国を訪問した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は本研究の進め方を3 段階に分けた。すなわち、第1段階は1960ー1990 年の研究を充実させること(2019 年 9 月まで) ;第2段階は資料調査、インタビュー、世論調査により、2000ー2010 年代の内容を加筆すること(2020 年 9 月まで) ;第3段階は、研究成果を社会に発信すること(2021 年 3 月まで) である。 第1段階において、筆者は、日本及び海外の学会、シンポジウムで計6回発表し、高い知見を有した専門家から有益なフィードバックを得たことで、内容を充実させることができた。 第2段階において、申請者はタイのバンコクを訪問し、研究の資料として用いる外務省の外交記録、タイの研究機関誌、論文集、新聞記事、学術論文、書籍などを収集した。そして、インタビューの対象であるバンコクとチェンマイの大学の教授を訪問し、インタビュー実施の準備も整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、本研究は3段階に分けられている。2020年度において、申請者は、第2段階と第3段階を中心に実施したいと考えている。 第2段階のインタビューにおいて、インタビューの対象として現在予定しているのは、元在中国タイ大使 (2 名)、元政治家(5 名)、タイ観光庁東京、北京事務所所長(2 名)、大学教授(5 名、チュラーロンコーン大学、タマサート大学、チェンマイ大学)、タイ全国で知名度の高い若手のオピニオン・リーダー(3 名)である。従来、2020年度に申請者は、2回タイへ渡航する予定であるが、新型コロナウイルス感染症が拡大する現状を鑑みて、可能な限り、申請者はZOOMを通してインタビューを実施することにした。 第3段階において、申請者は日本語、英語の論文集に研究成果を投稿しつつ、日本語書籍として出版する準備も進めていきたい。
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