2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Economic Models of Welfare Stigma
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19K23194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栗田 健一 九州大学, 経済学研究院, 助教 (10845978)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | スティグマ / 生活保護 / 漏給 / 不正受給 / 貧困の連鎖 / 進化ゲーム / 文化伝播 / 内生的選好 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究成果として、Kurita, Hori and Katafuchi (2019)とKurita and Hori (2019)の研究論文を作成し、Kurita, Hori and Katafuchi (2019)はWorking Paperとして公開した。Kurita and Hori (2019)は、日本応用経済学会秋季大会と九州経済学会にて報告を行った。 Kurita, Hori and Katafuchi (2019)では、福祉制度における不正受給と漏給が同時に生じる状況を内生的スティグマモデルを用いて分析した。結果として、スティグマが深刻な均衡と深刻でない均衡が複数均衡として存在する可能性があることを明らかにした。また、比較静学分析より給付水準が上昇すると、受給者を増やす直接効果とスティグマを通した負の間接効果が生じることを明らかにした。一般に直接効果と間接効果の大小関係は不明確であるが、OECDのマクロパネルデータを用いた実証分析によると、給付水準がある程度低い範囲では、給付水準が上昇すると保護率は高まるが、給付水準がある程度高い範囲では、給付水準が上昇すると保護率が低下するという結果を明らかにした。この結果は、先進国の中でも、福祉が手厚いが一部の貧困層の利用している状況と福祉がそれほど手厚くないが多くの貧困層に利用されている状況とに二分されているという現実と整合的であり、これまでの福祉研究に一石を投じるものである。 Kurita and Hori (2019)では、低所得であることを恥と感じる価値観が世代間で伝播する状況を分析しており、Bisin and Verdier(2000, 2001)の文化伝播モデルにスティグマを導入した。結果として、低所得であることを恥と感じるグループと感じないグループに分離する状況が安定的な定常点として存在することを明らかにした。この結果は、貧困の連鎖を文化の分断から考察することの重要性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、研究のサーベイが完了し、2019年度中にワーキングペーパーを発表し、査読付き国際誌に投稿している。また、発展的モデルに関しても基礎文献のサーベイがおおよそ完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の下で執筆中の論文の査読付き国際誌から掲載のアクセプトを得ることを第一目標とする。改定要求を要請された場合、可能な限り2020年度中に修正、再投稿することを目標とする。Kurita and Hori (2019)に関しては、ワーキングペーパーとして発表し、国際学会での報告及び査読付き国際誌への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ソフトウェアを割引価格で購入することができたため。この未使用分は次年度請求分の物品費に含めて使用する。
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Research Products
(7 results)