2019 Fiscal Year Research-status Report
報酬は温暖化対策のインセンティブとなるか:表彰制度による検証
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19K23207
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
矢島 猶雅 早稲田大学, 政治経済学術院, 研究助手 (10844532)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 表彰制度 / 計量分析 / 都道府県レベル / 温暖化対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、主に都道府県レベルのデータ(CO2排出量や、製造業部門経済変数)の整理と、日本の表彰制度のデータを精緻化した。整理したデータを用いて、日本の都道府県が実施する、事業所の優秀な温暖化対策取り組みを表彰する制度の有効性を検証した。分析の結果、表彰制度がある場合、当該都道府県のCO2排出量が削減されることが明らかになった。当該論文は、査読を経て、『日本経済研究』に掲載が決定している。 現在は、表彰制度と他の自主的取り組みを促す政策の関係性を分析することを目的する研究を進めている。都道府県が実施する、地球温暖化対策等に係る計画書制度と呼ばれる、一定規模以上の事業所に対し、温暖化対策の計画の作成と実施報告のみを義務付ける制度がある。当該制度には都道府県によって差異があり、いくつかの都道府県では、優秀な取り組みに対する表彰をしている。表彰の効果のさらなる分析と、自主的な取り組みをベースとした政策における表彰の役割を明らかにすることが可能である。 都道府県レベルのデータを用いた分析の結果、当該制度の中では、表彰の有意なCO2削減効果は確認されなかった。こうした結果の違いにどのような意味があるかは、今後の課題である。本研究は、早稲田大学現代政治経済研究所の英語のワーキングペーパーとして公開している。Western Economic Association Internationalなどの国際学会へ口頭発表を応募し、採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、データの整理を順調に進めることが出来ている。都道府県レベルのデータと制度の情報の整理を完了し、現在は、市区町村レベルデータの作成に取り掛かっている。また、それらを用いた研究成果の発信も順調である。現在、日本語の査読誌に掲載が決定し、新しい研究成果をワーキングペーパーとして公開している。Western Economic Association Internationalなどの国際学会へも応募した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、市区町村データの整理を進める。当該データを用いることで、制度の効果をより精緻に分析することが出来る。また、可能な限り市区町村で実施されている表彰制度や関連制度の調査も並行して進める。それらのデータを用いて、主に英文での研究成果発信を目指す。海外学会へ積極的に応募し、そこで得られたフィードバックを反映しつつ国際雑誌への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究環境の整備に主に研究費を使用した。他方で、データ入力や整理用に関して、研究補助員の雇用を予定していた。しかし、手入力などが必要な新たなデータベースの作成よりも、既存のデータベースの整理や、申請者が対処可能なデータの整理、それを用いた論文の執筆に集中した。論文の執筆に想定していたよりも時間がかかったため、その後に予定していた研究補助員の雇用を次年度に回すこととした。
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