2019 Fiscal Year Research-status Report
時空間ボラティリティモデルの拡張とボラティリティの時空間波及効果の検証
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19K23216
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇樹 東北大学, ヨッタインフォマティクス研究センター, 学術研究員 (80848078)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ボラティリティ / 空間計量経済学 / 空間重み行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新たな時空間ボラティリティモデルとしてSAR(p)-GARCH(k, l)モデルを開発した。複数の金融資産の相関を考慮した多変量ボラティリティモデルは、単変量モデルと比べボラティリティの予測精度が向上するなど大きな利点を持つ。しかし、その一方で、観測個体が増えるにつれて、推定すべきパラメーターの数が爆発的に増えてしまうという次元の呪いと呼ばれる問題を持つ。本研究では空間計量経済学のアイデアをファイナンス計量経済モデルに応用することで、次元の呪いを解決した新たな多変量ボラティリティモデルを提案した。具体的には、空間計量経済学のツールである空間重み行列を用いることで次元の呪いを解決した。 提案したモデル内のパラメーターは各段階で擬似最尤推定法を用いた二段階推定法により推定される。推定量の漸近的性質として各推定量が一致性を持つことを示した。また、推定量の小標本特性を調べるためにモンテカルロ・シミュレーションを行い、提案した推定量のバイアスと平均二乗誤差はモデル内の誤差項が従う分布によらないことを確かめた。 最後に提案したモデルを米国の株式市場のインデックスであるS&P500に含まれる395社の株式の収益率のボラティリティの分析に応用した。分析結果から提案したSAR(p)-GARCH(k, l)モデルは既存モデルよりも高い予測精度を持つことが明らかになった。 以上の得られた成果を3つの国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はモデルの構築、推定量の導出、導出した推定量の漸近的性質として一致性の証明、提案したモデルの実データである米国株式市場データへの応用を行った。 以上の成果を得ることができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は以下の3点である。 1点目は、推定量の漸近的正規性を証明することである。今年度得た推定量の一致性という漸近的性質を用いて、提案した推定量の収束の速さを明らかにし、推定量の分布が正規分布に収束することを示す。 2点目は、提案したモデルの実データへの応用結果を増やすことである。分析においては空間重み行列の選択が重要になるため、複数の重み行列を作成し、どのような重み行列が現実の株式市場の特徴を適切にとらえているのか明らかにする。 3点目は、得られた成果を論文にまとめることである。本年度得られた成果と上に挙げた今後の研究課題を解決し、論文にまとめ国際誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
研究成果の報告として参加した国際学会の一つにかかる費用を別の研究費から捻出したため、次年度繰越が生じた。
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