2021 Fiscal Year Research-status Report
不完全情報のもとでの期待形成メカニズムの研究:金融政策分析への応用
Project/Area Number |
19K23219
|
Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
加藤 涼 亜細亜大学, 経済学部, 教授 (20843692)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 不確実性 / インフレ動学 / インフレ期待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、不完全情報下において、長期的な定常状態に関する情報が逐次的にしか蓄積されない場合の経済主体の行動をモデル化し、マクロ経済変動(特にインフレ率の変動)の要因解明に取り組むことを目指している。令和3年度(2021年度)における主な研究実績は以下の通り。 まず、「独占度・集中度が高い産業ほどインフレ率の慣性が高まる」ことを発見した理論・実証研究については、令和2年度に"Sectoral inflation persistence, market concentration, and imperfect common knowledge," Economic and Social Research Institute (ESRI), Discussion Paper No. 359(奥田達志氏・敦賀貴之氏との共著)として公表済であり、このバージョンに対する査読者らからのコメントを踏まえ、追加分析や論文の改訂を進めた。追加分析に基づく査読者やエディターとの数度の対話・議論を経て、同論文の改訂稿は、2021年12月、Journal of Economic Behavior and Organizationに掲載されることが決定した(研究論文1)。 並行して、令和3年度には、長期的な定常状態におけるインフレ率(いわゆるトレンド・インフレ率)が不確定な動学的確率的一般均衡モデルの推計を引き続き行い、概ね結果が出揃ったため、論文ドラフトの執筆を開始した。なお、暫定的な推計結果を、Western Economic Association International(WEAI)の96th Annual Conferenceにおいて学会報告し、コメントを得た (研究論文2)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究論文1については、査読コメントを受けた追加分析などに予想以上に時間を要したが、学術誌への掲載が決まったことで、研究としての区切りがついた。 研究論文2については、共同研究者との打ち合わせや研究作業をオンラインで進めたものの、やはり対面での作業に比べて効率性が低下したと思われた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究計画に沿って研究を進める。 論文1については、国際学術誌への掲載をもっていったん区切りとしたい。当面は、論文2の初稿完成とワーキングペーパーとしての発表を目指す方向で集中したい。 一方、仮に研究論文2が順調に進捗するようであれば、類似のアイデアを別の対象(労働市場や銀行システム)に対して応用できないか、新たな方向性を模索したい。
|
Causes of Carryover |
引き続きコロナ禍の影響で、学会参加や共同研究に必要な出張がオンラインで(やむなく)代替され、旅費が未執行となった影響が大きい。ただし、出張に代わりオンラインでの(共同)研究環境の整備のため、必要な物品(モニターやウェブカメラなどのパソコン周辺機器)の購入を行ったため、前述の未執行分と一部が相殺されている。
|