2022 Fiscal Year Annual Research Report
不完全情報のもとでの期待形成メカニズムの研究:金融政策分析への応用
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19K23219
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
加藤 涼 亜細亜大学, 経済学部, 教授 (20843692)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 不確実性 / インフレ動学 / インフレ期待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、不完全情報下において、経済の長期的な定常状態に関する情報が逐次的にしか蓄積されない場合の家計や企業の行動をモデル化し、マクロ経済変動(特にインフレ率の変動)の要因解明に取り組むことを目指してきた。令和4年度(2022年度)末までにおける主な研究実績は以下の2点。 まず、「独占度・集中度が高い産業ほどインフレ率の慣性が高まる」ことを発見した理論・実証研究については、ワーキングペーパー版の数度の改訂を経て最終版(Sectoral inflation persistence, market concentration, and imperfect common knowledge)が、2021年12月、Journal of Economic Behavior and Organization 192, pp. 500-517に掲載された(研究論文1)。 さらに、令和4年度には前年度に開始した長期的な定常状態におけるインフレ率(いわゆるトレンド・インフレ率、長期予想インフレ率とも呼ばれる)が不確定な動学的確率的一般均衡モデルに関する研究を継続した。同モデルを日本の長期時系列データに適用し、暫定的な推計結果とその解釈を得たため、暫定第1稿を"Trend Inflation in the Japanese pre-2000s: A Markov-Switching DSGE Estimation," 神戸大学Discussion Paper 2212として取りまとめ、識者からのコメントを求めた。このバージョンに対して「結果の解釈にはnarrative approachが有効ではないか」とのコメントがあり、これを受けて主に1970年代の公式資料(国会議事録等)を調査し、当時の金融政策決定についてのファクトと推計結果との整合性をチェックした。その後、国際学術誌への投稿バージョンの執筆に取り組んだ(研究論文2)。
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