2019 Fiscal Year Research-status Report
小売企業の店舗存続を支える競争優位基盤の探求:組織能力と店舗立地に注目して
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19K23231
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
西川 みな美 帝京大学, 経済学部, 助教 (60846260)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 小売企業 / 立地 / 組織能力 / 店舗撤退 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小売企業の店舗存続を左右する競争優位基盤を実証的に解明することである。当該年度においては、小売企業の競争優位基盤として、小売企業の価格競争力や差別化を支える「組織能力」と、個々の店舗の経営環境の好ましさを規定する「店舗立地」に焦点を当て、理論仮説を構築したうえで実証分析が行われた。分析に際しては、我が国のGMSチェーン12社1400店舗余りを対象に、2005年から2014年までの10年間にわたる二次データを収集し、独自のデータベースを構築した。 分析の結果、店舗立地に関しては、当該地域内における積極的なドミナント出店が撤退確率を低下させる効果を有していたものの、仮説に反して、需要量や空間的競争の激しさは有意な影響を及ぼしていなかった。他方で、組織能力に関しては、バイイング・パワー、ブランド訴求度、そして店舗運営効率性が店舗撤退に有意な影響を及ぼしていた。以上の結果を統合すれば、小売企業の競争優位基盤が、店舗レベルの需要や競争といった立地環境の良し悪しではなく、ドミナント出店や組織能力という企業固有の強さに起因することが示唆される。小売企業は立地産業といわれるほどに立地が重要視されてきたことに鑑みれば、この結果は興味深いものであり、ここに本研究の重要な成果が見出せるだろう。またこの結果を踏まえ、今後の研究課題として、小売企業の組織能力と出店戦略の関連性に注目し、小売企業の出店の意思決定メカニズムを明らかにすることを目指して研究の更なる発展を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、当該年度においては予定通り実証分析の実施まで終えることができた。ただし、その分析結果については、一部で仮説に反する結果が得られたことから、この点を慎重に考察し、必要に応じて再度分析設計を見直しつつ研究成果の精緻化を図りたい。すでにこの作業を進めており、次年度の計画遂行に支障はないものと思われる。したがって、当該年度の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、まず分析結果の考察および分析の見直しを行う。特に、立地に関するデータは再考の余地があり、再度データ収集を行いたい。この点に次年度の予算が充てられる予定である。再分析が終了したのちに、研究成果を学術誌に投稿する。 研究計画の変更点として、国内外の学会で報告することを検討していたが、昨今の社会情勢により学会開催の見通しが不透明であるため、その代替として学内あるいは学外の研究会で報告しフィードバックを得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の分析結果から再度データの見直しと再分析を要すると判断したため、そのデータ収集および分析の経費を次年度の予算として計上した。なお研究計画としては、次年度前半にこれらの作業を行う予定である。
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