2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconsidering David Ricardo on Public Finance and the abstractness
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19K23238
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
若松 直幸 中央大学, 経済学部, 助教 (50847340)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | デイヴィッド・リカード / 経済学方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者は、2021年10月に「リカードウの重層的方法 ー賃金課税と外国補助金の考察 」という表題で第255回経済学史研究会(オンライン) にて研究報告を行った。当該報告は、本研究成果の一つである"On Ricardo’s Multilayered Method: Wage Taxation and Foreign Subsidies Considered"(2020年10月公開; MPRA Paper No. 103531)の内容に基づき、それを発展させたものである。 当該報告は、リカードの主著『経済学および課税の原理』第16章「賃金に対する租税」の 一節と1820年に行われたリカードと彼の同時代人との手紙の内容について、数理モデルを用いた整理・比較を行うことで、その方法的特徴を明らかにしようとした(こうした数理モデル化は前出のMPRA Paperでは行っていない)。そこでの数理モデルによる整理を受けて、言葉だけによる説明の場合と比べて、リカードの理論における前提・仮定を、部分的にではあるが、よりわかりやすく示せたと思われる。 しかしながら、当該報告の討論者および参加者とのディスカッションを通じて、本報告の行った数理モデル化は必ずしもリカードの経済体系と合致しない可能性があると指摘され、先行研究によってすでに確立されたリカードの理論モデルなどを考慮して、本報告の問題を論じる必要があることが明らかにされた。したがって、リカード経済学における正確な方法的特徴を論じるためにも、当該報告で得られた知見を考慮した、リカードの経済(課税)理論に関する新たな研究を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況が遅れている理由として、次の理由を挙げることができる。 第一に、2021年10月に行われた研究報告より、これまで行っていた研究について修正すべきと思われる箇所が見つかったことが挙げられる。本問題はリカード理論の根本的な問題とかかわっているため、その修正に十分な時間を割く必要がある。 第二に、2020年から猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の問題を挙げることができる。当該感染症問題のために、2021年度も多くの研究会・学会発表への参加が困難な状況であった。本研究課題の遂行にあたり、適宜各所での研究報告の実施・内容の改訂を予定していたため、そうした手段がとれなくなっていることが本研究課題遂行に大きな影響を及ぼしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、次のように研究を行っていきたい。 第一に、本研究課題は、当初の予定とは異なり、リカードとジェームズ・ミル、さらにジョン・スチュアート・ミルらとの比較分析に入る前に、リカード自身の方法論について新たな研究を行う方向に変更した。これに関して、2021年10月に行われた第255回経済学史研究会における報告成果を考慮した論文の作成・英文化を行う必要がある。この作業を2022年度前半に完了し、当該論文の国際ジャーナルへの投稿を行っていく。 第二に、リカードとジェームズ・ミルの経済学方法論、およびリカードとジョン・スチュアート・ミルの経済学方法論について、ワーキング・ペーパーの作成を行う。これらの研究は本来2021年度に行う予定であったが、研究計画の遅れに伴い、必ずしも十分な研究を行えていない。このうち、まずはジェームズ・ミルの経済成長論と課税に関する論文の作成を目指す。そして、それに続いて、ジョン・スチュアート・ミルの課税論と公債論に焦点を充てた論文の作成を目指す。 以上になるが、今後とも新型コロナウイルス感染症に伴う研究計画の変更が起こりうるため、臨機応変な対応を考えていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、二つ挙げることができる。 第一に、2020年度に引き続き、2021年度においても、予定されていた本研究課題と関連する国内外の出張について、新型コロナウイルス感染症問題のために、そうした出張ができなくなり、旅費などの使用ができなかったため。 第二に、本研究は基本的に海外での研究報告実施後に加筆・修正し、英文校正にかけることを予定していたが、第一の理由により海外報告ができなくなったことから研究計画に大幅な遅れが生じており、それに伴い、2020年度と同様に、2021年度もあらかじめ予定されていた支出が行えない状況となっていたため。 今後の助成金の使用計画としては、基本的には、研究に必要な書籍の購入を中心に行う。しかしながら、長引くオンライン中心の研究活動を受けて、PCをはじめ関連する機器の損耗なども生じているため、オンライン対応機器の物品の補充なども行う。一方で、新型コロナウイルスの感染状況も徐々に落ち着いてきているので、様子を見て国内出張を行い、その旅費に助成金をあてたいと考えている。
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