2021 Fiscal Year Annual Research Report
経営管理システムによるイノベーション創出に組織の慣性が与える影響についての研究
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19K23241
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
新改 敬英 熊本学園大学, 専門職大学院会計専門職研究科, 准教授 (30848825)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 組織慣性のコントロール / 両利きの経営 / マネジメント・コントロール・システム |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,当初予定していた研究計画に大きな制約がかかることになったものの,今後の研究につながる大きな示唆を得ることができたと考えている。以下,最終年度ならびに研究期間全体を通じて実施した研究成果の概要について述べる。 2年目と3年目(最終年度)は,先述した制約のために,対面でのインタビュー調査や企業を訪問してのフィールド調査はほとんどできなかった。しかしながら,オンライン会議ツールの発達によって,インタビュー調査や現場の動画収録を活用しての調査を行うことが可能となり,最終的に民間企業計23社の経営者・管理職・組織成員へのインタビューを行うことができた。 これらの調査で,非常に興味深い点を発見することができた。具体的には,調査した企業群ではボトムアップによる新規事業の取り組みよりも,トップダウンによる新規事業への積極的な取り組みが見られた。これは,ボトムアップでは既存事業が持つ慣性から抜け出すことができず,非連続的な新規の取り組みを行うコストが大きくなることで,新規事業を強力に推進するインセンティブを持てない可能性が考えられた。また,トップダウンで新規事業を推進している企業は,トップ自らが新規事業の探索を行っているケースがほとんどであった。 以上の調査で得られた示唆は,少なくとも中小企業においては新規事業の探索機能としてトップの役割が大きいことと,既存事業と新規事業の「両利き」を成立させるうえでは,既存事業が持つ慣性を部分的に緩めるようなマネジメント・コントロール・システム(MCS)の役割が大きいことであった。いずれも既存研究ではあまり触れられていない点であり,本研究は当初の目的であった既存研究の拡張に貢献できたと考えている。今後は本研究で示唆を得た「組織の慣性をコントロールするMCS」について,更なるフィールド調査等を通して明らかにしていきたい。
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