2019 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの住宅再建における選択の社会構造的要因と納得構造の解明
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19K23244
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平川 全機 北海道大学, 文学研究院, 助教 (30572862)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 住宅再建 / 社会構造的要因 / 納得 / 選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はこれまで得られたデータを用いた東日本大震災からどのように住宅再建を行うのかについて社会構造的な要因と人々がそれをどのように語り納得しているのかという納得構造について分析を進めた。 社会構造的要因については、その研究成果の一部を髙崎優子, 黒田暁, 平川全機「漁業再生とコミュニティ再生―宮城県石巻市 北上町十三浜:変動に対するアダプティブな 地域漁業(4)」地域漁業学会第61回大会 2019年11月30日で報告している。ここでは既存の集落の世帯数から集団移転後にどの程度の世帯数が残ったのかについて対象地域の主要な生業の一つである漁業との関係について検討をおこない、生業構造と住宅再建に関する人びとの選択の関係を明らかにした。具体的には漁業組合の正組合員数が震災前より多かった集落ほど集団移転後にも世帯数を維持している傾向がみられた。 現地の調査をもとにした研究と並行して、これまでの先行研究の整理を行った。これは東日本大震災の既存の研究が建築学、看護学など実学系の学問が中心となって行われており、社会学系の研究においても津波被害よりも原発被害に関する研究が多くみられることによる。東日本大震災の津波被害からの住宅再建に焦点を当てた研究を系統的に整理しておく必要があった。その成果は、庄司知恵子・平川全機,2020「津波被害と生活再建:東日本大震災の研究動向整理から」『岩手県立大学社会福祉学部紀要』22:65-74にまとめた。 このように当該年度は研究を進める上で不可欠な基礎的な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、これまでに得られているデータを活用した分析および先行研究の整理は十分に行うことができ想定通りの成果を上げることができている。しかし昨年度2月より新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて現地調査が困難となっている。本研究では現地で住宅再建を行った当事者からの聞き取り調査を行うことが不可欠であり、年度内に実施予定であった調査を中止したためその点で遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、現地調査は困難であるため、これまでに得られたデータを用いて2つの側面から研究を進める。1つは人口や経済動向など数値データの活用である。これらを用いて社会構造的な要因の分析を進める。同時に東日本大震災からこれまでに行ってきた聞き取り調査のデータを再分析し人びとの語りがどう変化していったか、そこにどのうような納得の構造が存在するかより精緻な分析をすすめる。現状得られているデータを十分に活用することで研究を進めつつ、現地調査が再開できる時期を待ちたい。
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Causes of Carryover |
残額微小により翌年度に繰り越し、本年度使用額と合わせて使用することが適当であったため繰り越しが発生している。
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