2019 Fiscal Year Research-status Report
南アフリカの人種的秩序の変遷に関する社会学的研究:アジア系住民の中間性に注目して
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19K23246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 めゆ 京都大学, 文学研究科, 人文学連携研究者 (40843743)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | レイシズム / 白人性 / 中間性 / アジア系移民 / アフリカ-アジア関係 / アフラシア / 南アフリカ / 関係社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、19世紀後半から20世紀初頭に活性化したアジア人の国際移動とグローバルな白人意識の編成との関係を重視するレイシズム研究・白人性研究の蓄積を踏まえ、その舞台の一角である南アフリカについて、アジア人の諸実践が当地の人種的秩序に与えた影響を社会学的手法を用いて明らかにすることを目指してきた。その独自性は、アジア人に対する排斥のみに注目した従来型の黄禍論研究を退け、人種序列階梯においてヨーロッパ人/入植者とアフリカ人/原住民との中間に置かれたアジア人を、各層の差異化戦略を刺激しながら社会の人種化に強度を与える存在として積極的な観察の対象とした点にある。 本年度は、南アフリカのアジア系移民史に関する文献研究に加え、近年主に北米で提出されている関係論的アプローチによるレイシズム研究の成果について研究を進めた。関係論的アプローチにおいては、人種化された社会関係の編成過程の分析にあたって、他者・他集団との関係性への着目がいっそう強調される。それらを参照することで、南アフリカにおけるアジア人の位置の変遷をより批判的に検討することが可能になった。 このことは、大規模な国際研究集会や論集の刊行が続くアフリカ-アジア関係研究(アフラシア研究)にも重要な示唆を与える。たとえば、南アフリカに21年間居住していたガンディーは長らくアフリカ-アジアの交流史の象徴的存在だったが、近年の南アフリカでは当時のガンディーとアフリカ人との葛藤や緊張関係が掘り起こされ、歴史の再審にさらされている。この事例が示すように、本研究の進展はアフリカ-アジア関係研究をいっそう精緻化させるとともに、現代の社会的寛容と共生をめぐる課題への手がかりとなることが見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年~2020年3月まで、日本国内でのインタビュー調査と文献研究を進めた。それらの成果はアフリカ-アジア関係研究に関する学会発表や書評論文において発表しており、研究はおおむね順調に進展したといえる。 ただし、2020年2~3月に計画していた南アフリカでのインタビュー調査・アーカイブ調査は、新型コロナウイルス感染症の拡大により中止(次年度に延期)した。したがって、研究課題の進捗状況に関する総合的な評価としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施を見送った南アフリカでの調査と2020年度に計画しているイギリスでの調査については、新型コロナウイルス感染症の拡大状況等の推移を確認しながら検討していく。今後研究を推進するための新たな方策として、オンラインでのインタビュー調査の実施も検討している。これらの手法を導入することにより、できる限り研究を進め研究成果の発表につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
研究計画の段階では、2020年2~3月に南アフリカに滞在し、プレトリア・ヨハネスブルク・ダーバン各都市での調査を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により渡航を中止(延期)したため、直接経費のうち海外調査経費相当額を次年度使用とすることになった。現時点では、2020年度中に南アフリカ調査を実施することを計画している。
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Research Products
(5 results)