2019 Fiscal Year Research-status Report
The Concept of Universal Peace and Atomic-bomb Experience: An Empirical Study of Discourse Transformation and Globalisation
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19K23247
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 原爆・被爆 / アイデンティティ / 記憶継承 / 普遍的平和 / 市民参画 / ツーリズム / 博物館 / 実証 |
Outline of Annual Research Achievements |
半年間の主要な研究実績の一環として、①汎用性の高い調査データ構築、②普遍的平和概念の構築に関する資料収集とデータ化整理、③国際研究会運営と発表、④国内会議、ワークショップ発表、および ⑤市民講座での発表、さらに⑥平和と観光のオンライン口コミ分析、⑦二本の査読付き論文(国際学術誌、IF1.75)の発表を行った。
①データ構築では、「被爆の実相、普遍、平和、心的障害、避難・救助の手段」など概念関係のサブセットデータを構築、解析・考察し、査読付き論文を発表。①と②をもとに、③の「Topology of Air」国際研究会をグラスゴー・ケント・ロンドン各大学の共催で広島大学にて開催し、④の北海道大学メディア・観光学院共催ワークショップで発表のほか、OSEAL第58回国際会議・広島で発表し、⑤の広島市文化センター・広島市立大学共催ヒロシマ・ピースフォーラム・広島からの平和学連携講座第5回の講師として広島平和記念資料館で発表し、学術的成果の共有を通じた平和促進を考察、社会貢献に努め、⑥オンライン口コミ分析を行った。上記①から⑥をもとに、⑦の査読付き国際論文発表を行った。これは以下二点である。 1 van der DOES, L. and KAWANO, N. (2020)「『乗り物』を介した被爆体験の想起とトラウマの実証的考察」、広島平和科学41, pp.13-31. 2 van der DOES, L. and KAWANO, N. 2019) ‘Online tourist reviews and accidental conveyors of memories of the atomic bomb’, Journal of Tourism and Cultural Change. Published Online 17 December 2019. pp.1-18. IF1.75.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実証研究は、被爆75年を迎えて被爆者が超高齢化する中、被爆の実相と「普遍的平和」を次世代に継承する歴史的および現行の各種試みを取り上げ、その具体的内容と手法、効果を明らかにし、将来展望を示唆することを目的とする。本年度は、①被爆体験の実相と記憶の忘却が加速化し、同時に、SNSなどデジタルコミュニケーションを通じて、ヒロシマ・ナガサキの体験と核に関する虚偽報道や誤情報の伝搬が拡大しつつある現状を確認すると同時に、②被爆者とその支援者が、個々人の記憶に根ざして「被爆の実相を伝える」活動を継続しつつ、平和活動の牽引者として「普遍的平和を希求」するようになった歴史的変化に注目し、主要なイベントとその社会的背景を定性的に明確にした。その上で、③「普遍的平和を希求」する社会的な集団アイデンティティの形成が、「平和都市HIROSHIMA」において、市政と市民の機動力となってきた事例をまとめ、令和二年度に行う多分野融合的分析に向けて、関係資料のデータ化をすすめている。
本実証的研究のアウトプットは、その(構築中の)データと分析結果の汎用性から多岐にわたる。これまでのところ、④「平和都市HIROSHIMA」のアイデンティティ形成の過程と、変化を促した社会文化的、政治経済的、法的背景を浮き彫りにし、⑤ツーリズムを通じ、平和に関する博物館で被爆体験の実相にふれ、ウェブ上の口コミなどを通じて自発的に、また当事者性を持って、記憶と平和への取り組みを継承しようとする現象を定性・定量的手法を用いたメディア分析によって実証し、さらに⑥被爆者の証言活動の中に、「持続的」な心の復興と公共交通機関の持続性の関係を見出した。これらは査読付き論文として発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、国内外での原爆・被爆体験に関する一般社会の認識を比較し、日本の原爆体験に関係する「普遍的平和」概念の発展過程と条件を明らかにする。手法として、継続的な資料整理とデータ構築、多分野融合的解析・分析と考察を行い、結果を査読付き国際論文と国内外の学術会議発表で共有していく。
そのため、国内外での被爆者聞き取り調査とアンケートのほか、オランダ、フランス、イギリス、スイス、ドイツ、米国における報道資料や歴史的希少資料とアンケート結果を引き続き収集・分析する。特に、多分野融合的分析が可能な一次資料としてのデータ群の構築に注力する。これにより、多様な原爆体験を表現する言説のパターンを歴史社会的背景の文脈に据えて分析し、重層的な考察を可能にする。例えば、既存の1985年被団協原爆被害者調査、2005、2015年朝日新聞被爆者アンケート調査データと、2010―2020年読売新聞被爆者調査をもとに、従来より客観的で再現性のある分析が困難とされてきた自由回答を引き続き電子化する。
同時に、新たに収集した資料から言説分析に特化した網羅的なデータベースを新規構築して、多領域横断型研究(人文・自然科学など)への利用を可能にする。さらに、ウェブ上で公開の証言集から個人情報や倫理・著作権上の問題がないものに限定して、構築中のデータベースに組み込む。解析においては、グラフ理論及びニューラルネットワークを用いた可視化法と従来的統計的手法を併用する。特に、大量文書から主要題材を抽出するに当り、教師無し及び半教師有り機械学習アルゴリズムに使う「潜在的ディリクレ配分法(Latent Dirichlet Allocation: LDA)」を用いたトピックモデルで潜在意味解析を行い、多重対応分析で語間及びカテゴリーと語の間の関係性を可視化する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Migration and Songs of Hearts2019
Author(s)
van der Does, Luli
Organizer
6th International Workshop on Music, Memory and Boundaries in East Asia ~ Mobility and Popular Songs in Building a New Nation
Int'l Joint Research / Invited
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