2022 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Research on Women's Social Movements that Question Women's Poverty due to Personalization
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19K23248
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
仁井田 典子 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (00852170)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 女性 / 貧困問題 / 社会運動 / 個人化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人と人とのつながりが希薄化して個々人がバラバラにされる「個人化」が進行するなかで、2008年に「女性の貧困の可視化」を目的として立ち上げられた「女性と貧困ネットワーク」の運動はどのようなものであったのか、積極的にかかわっていた女性たちへのインタビュー調査の結果を用いてみていった。本研究を通じて、今日の日本社会における「女性の貧困」の問題を問い直すことを目的としている。 2022年度は、これまでに集めたインタビューデータをもとに、日本都市社会学会大会ラウンドテーブルにおいて「女性と貧困」というタイトルで、女性たち同士のつながりの特徴と、かかわっていた女性たちにとって活動はどのような意味を持つものだったのかについての報告を行なった。 まず、女性たち同士のつながりは、自分と同じような状態におかれている他者に対する「弱さ」への共感により、対等な立場から互いを気づかい合うといった特徴を持つものである。 また、50代~60代女性たちは、自分たちが虐げられてきた性差別を生み出す社会構造が、女性の貧困問題を生み出していることを社会に訴えていこうとした。一方、20代~30代の女性たちは、存在しない者として扱われ、社会規範から外れているとして問題視され、蔑ろにされているといった「生きにくさ」を抱えており、それらが活動への参加に結びついていた。彼女たちは、女性の貧困を自らの存在をもって社会に知らしめ、社会規範から外れた自らの存在が問題視されることや他者によって自らの存在が蔑ろにされることに怒りをあらわにし、自分たちの居場所をつくりだしていこうとしていた。こうした年代による意味づけの違いは、「個人化」により若い年代の女性たちの方がつながることを目的とする傾向が強くなっているために生じているのだと考えられる。 2023年度は、これまで行ってきた研究報告をもとに研究論文を作成したいと考えている。
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