2019 Fiscal Year Research-status Report
精神科入院患者の人権救済制度の運用のあり方に関する研究
Project/Area Number |
19K23249
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 暢子 京都府立大学, 公共政策学部, 助教 (80845157)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 人権救済制度 / 精神医療審査会 / 退院請求 / 処遇改善請求 / 精神科入院患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神科入院患者の人権救済制度の運用のあり方について、入院患者にとっての利用のしやすさに着目して検討することである。令和元年度は、国内の人権救済制度である退院等請求制度の利用のしやすさに関する実態を把握するため(1)先行研究レビュー、(2)質問紙調査票の作成を行った。また退院等請求制度の運用のあり方の示唆を得るため(3)諸外国の精神科入院患者の人権救済制度とその運用に関する情報を、文献及び公的機関等のWEBサイトより収集した。 (1)先行研究レビューでは、退院等請求制度の利用のしやすさ、とりわけ請求のしやすさにかかわる論点を抽出し、整理した。その結果、患者の審査請求のしやすさには①患者への制度説明は原則1度でよいが、それで患者が情報を十分得られているか。②理解や判断能力が十分でない患者が、制度を利用するための支援があるか。③制度を理解し請求意思を持つ患者が、請求窓口へアクセスするための環境が十分に用意されているか。④請求窓口の職員が運用原則を遵守しながらも、柔軟な対応ができるか。⑤審査が迅速に行われるかどうか。などが関係していると考えられてきたことが明らかとなった。 (2)次年度実施予定の質問紙調査に向け、調査項目を検討し、調査票を作成した。 (3)カナダの複数の州とイングランドの精神科入院患者の人権救済制度と制度運用に関する情報を収集した。これらの国(州)の精神科患者の人権救済制度は、わが国の退院等請求制度と決して同一ではないが、患者の申請によって人権救済制度に申し立てることができる点など、共通点もみられた。また、これらの国(州)の制度運用は、わが国の退院等請求制度運用と比べて、様々な状態にある患者に配慮した、細やかな取り決めが、国(州)内の法やメンタルヘルス関係法規等においてなされていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、精神科病院入院経験者の協力を得て、精神科病院入院経験者への制度運用に関わる実態とニーズ調査を行う予定としていたが、改めて先行研究レビューを行う中で、各自治体の精神医療審査会の退院等請求制度の運用実態の一部を明らかにした上で、精神科病院入院経験者への調査に臨むことが望ましいことが判明した。そのため研究計画の調査部分の調査対象を、精神医療審査会事務局へと変更し、併せて調査計画(手順と時期)についても当初の計画から変更を加えた。そのため、研究の進捗についてはやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各自治体の精神医療審査会を対象とした質問紙調査を実施する予定である。加えて、質問紙調査の後、調査への同意が得られた事務局を対象に、制度運用実態の詳細等に関するインタビュー調査を予定している。 また国内の退院等請求制度の運用のあり方の示唆を得るため、カナダ・ブリティッシュコロンビア州を中心に、精神科入院患者の人権救済制度と運用に関する機関への視察及び担当者へのヒアリング調査も予定している。しかし新型コロナウイルスの流行の影響により、調査を当初の予定通り遂行できない可能性もある。その場合は、訪加によらない方法でのヒアリング調査の実施等を検討している。 最後に、これらの調査を実施した上で、国内の精神科入院患者にとって利用しやすい退院等請求制度の運用のあり方提言を行う予定である。 なお、研究結果については学会にて発表し、論文に執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予の研究計画から、調査対象及び調査計画(手順と時期)を変更する必要が生じた。このため令和元年度に予定していた調査の一部を、次年度に実施することとなった。これにより次年度使用額が発生した。 前年度未使用額分は、調査のための物品費、旅費および調査まとめにかかる人件費等に充てる予定である。
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