2020 Fiscal Year Research-status Report
精神科入院患者の人権救済制度の運用のあり方に関する研究
Project/Area Number |
19K23249
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 暢子 京都府立大学, 公共政策学部, 助教 (80845157)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 人権救済制度 / 精神医療審査会 / 退院請求 / 処遇改善請求 / 精神科入院患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神科入院患者の人権救済制度の運用のあり方について、入院患者にとっての利用のしやすさに着目して検討することである。令和2年度は、(1)国内の人権救済制度である退院等請求制度の請求窓口や窓口へのアクセス環境、また事務局職員の患者への対応等の現状を、請求のしやすさに関する側面から、アンケート調査により把握した。(2)制度運用のあり方の示唆を得るため、入院患者の請求のしやすさにつながる取り組み内容を、事務局へのインタビュー等調査より明らかにした。なおこれら2つの調査結果は、調査報告書としてまとめた。 (1)アンケート調査は、退院等請求の相談や請求の窓口となる全国67の精神医療審査会事務局を対象に実施した。回答は59事務局(88.1%)から得られた。主たる結果は①請求手続きの具体的な方法を記した紙媒体を病院内に配架していた事務局はなく、事務局等へ尋ねなければ、患者は請求手続き方法がわからない。②患者が請求手続き方法や請求をすすめるには、複数回の電話を要する可能性がある事務局が4割強ある。③9割以上の事務局が書面で請求を受理していたが、事務局所定の用紙のみ受け付ける事務局が3割あり、うち6割弱は、その用紙の配架が事務局のみである。等であった。こうしたことから、患者にとって、現在の退院等請求制度の請求環境や運用は、必ずしも利用しやすいものとなっていないことが示唆された。 (2)請求のしやすさにつながる取り組みについては、調査同意の得られた6事務局を対象に尋ねた。取り組み内容はa)時間外の留守番電話対応、b)訪問による請求支援、c)請求所定用紙の病棟内等への配架、d)外国語事例対応のための事務マニュアルの作成、等であった。調査を通し、患者にとって利用しやすい退院等請求制度の運用のあり方を、具体的に検討するための示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、アンケートやインタビュー等の調査時期を調整する必要が生じたこと、国内の退院等請求制度の運用のあり方の示唆を得るため、カナダ・ブリティッシュコロンビア州等への視察及びヒヤリング調査を予定していたが、渡航禁止等の措置により、研究計画と方法の変更に迫られたことから、令和2年度内に、本研究の最終目標である、国内の精神科入院患者にとって利用しやすい退院等請求制度の運用のあり方を検討するまでには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った退院等請求制度の利用、請求のしやすさにかかる調査結果及び収集してきたカナダの複数の州およびイングランドの精神科入院患者の人権救済制度と運用に関する学術的文献等をもとに、国内の精神科入院患者にとって利用しやすい退院等請求制度の運用のあり方を検討する。その研究結果は、論文に執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、当初予定していた研究計画から遅延が生じ、本研究の終了年度を1年延長したことによる。令和2年度未使用額分は、令和3年度の研究のまとめ等にかかる物品費や人件費等に充てる予定である。
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