2020 Fiscal Year Research-status Report
都市部若年非正規労働者による労働組合実践のビジュアルエスノグラフィー
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19K23252
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
岩舘 豊 文京学院大学, 人間学部, 助教 (50852472)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 社会空間分析 / ビジュアルエスノグラフィー / マテリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、まず労働組合研究のサーベイを実施し、本研究がもつ研究史上の位置づけをより明確にした。その結果として見えてきたのは、ポスト・フォーディズムの進展にともなう、都市に埋め込まれた、「生産点」以外の社会空間における「組織化」という論点であり、そこを用地とした都市研究と労働研究を接続する論理的回路であった。 新型コロナウィルス感染症の拡大により現地調査が困難となったことから、文献研究と収集したデータの分析を中心に進めた。まず、先行する都市研究や社会理論の文献サーベイを行うことで、ヒトーモノ関係を視座に入れた理論的な分析視角の精緻化を行なった。次に、ビジュアルリサーチ法の文献サーベイを行うことにより、マテリアリティに照準した社会空間分析とビジュアルエスノグラフィー法との有機的な接合の道筋を見出すことができた。それにより、個別事象の記述がもつ理論的意義が明確になり、収集したデータの分析深度が増したことは重要な到達点であった。 上記の分析視角及び経験的手法の有機な接合によるデータ分析の成果は、2021年2月に開催された、International Sociological Association第4回ISA Forum・RC44ラウンドテーブルにおいて、口頭発表として採択された。その成果を国際的な社会学および労働研究の文脈において発信・討議を行なうとともに、グローバルなlabor studies、中でもとくにロジスティクスワークをめぐる最新の研究動向に触れることができたのは、大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、研究課題そのものは、研究史上の位置づけ、理論的分析、データ解析において、着実に進展している。しかし、最も主要なアウトプットであるビジュアルエスノグラフィー自体の制作は、当初の研究計画からは遅れていると言わざるをえない。また、当初の研究計画において予定していた、海外をはじめとする現地での調査は、感染症の影響により実施がすることができず、現在においても実現の見通しも困難となっている。そのため、当初の計画からは修正が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策は、大きく以下の3点である。第1に、ビジュアルエスノグラフィーの制作に対し、優先的に研究資源を投下し、その完成を急務とする。上述したように、2020年度の成果によって、その準備はすでに整っている。第2に、計画していた現地・対面でのインタビュー調査や映像上映の実施計画を修正し、積極的にオンラインを活用する方向に切り替えていく。このことは、代替ということにとどまらず、ポスト・コロナにおける映像フィールドワークの道筋を積極的に探っていく意義をもつ。第3に、研究資料とくに映像データのリマスター化と保存を進め、オンラインも含めた対話空間を見すえた調査表現の基盤づくりを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により、海外(インドネシア)を含めた現地調査が実施できず、現状でも実現の見通しが立っていないことや、参加予定だった国際学会が延期となるなど、当初の研究計画について大幅に見直しが必要となったためである。今後の使用計画としては、第1に、ミニDVテープに記録してある映像データのリマスター化を行い、映像の質を向上させ、研究資料の適切な保存を図る。第2に、インタビューや映像上映会のオンライン化を進め、その実施と基盤整備に研究費を使用し、ポスト・コロナにおける映像フィールドワークを実施する。
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Research Products
(1 results)