2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Social Cohesion between Transnational Migrants and Host Society in Japan
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19K23255
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大野 光子 立教大学, 社会学部, 教育研究コーディネーター (70846203)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 移民研究 / エスニック・コミュニティ / 社会的多様性 / 社会的包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的を遂行する為、2019年度において次のような調査を遂行した。 (1)新宿の大久保エリアにおいて、エスニック・ビジネスを経営するオーナー、2人を対象にインタビュー調査を実施した。対象者はいずれも来日20年以上を経ており日本語は流暢であるが、いずれの対象者においても地元住民との関わりは、ほとんどない若しくは、皆無であることが分かった。さらにその理由として、自らを大久保の地元コミュニティから疎外されている存在として強く認識していることが明らかになった。次に、ハラルショップにおけるサービスエンカウンターの相互行為分析に着手した。当該エリアにあるネパール人の経営するハラルショップにおいて、サービスエンカウンターでの店員(ネパール人)と客のやり取りを一定期間に渡りビデオで録画した。この分析は、ホスト社会において第二言語としての日本語がどのように機能しているのかといった視点から、二者間の関係性にアプローチしようとするものである。2019年度においてビデオ撮影が完了し、現在は取得したデータの分析を進めている。 (2)2020年3月4日~15日にかけてオーストラリア・メルボルンにおいて、現地在住の日本人5人にインタビュー調査を実施した。インタビューでは、対象者がオーストラリア社会に対して、「一体感」や「寛容性」を抱いていることが分かった。 (3)2019年10月30日~11月5日にかけてバンコクを訪れ、タイにおける日本人退職後移住者の調査の為、バンコク日本人会事務局や「チュラロンコン大学アジア研究所」でのインタビューなど日本人コミュニティの調査を実施した。退職後にマレーシア等の海外に移住する「退職後移住」は、近年日本において、移住の一形態として注目を浴びている。本テーマに関する社会学的な研究はまだ少ないが、先行研究では、彼らがホスト社会と良好な関係を築いていることが報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下2点に分けて理由を説明する。 (1)当初、「日本に労働目的で来日しその後強制送還等で本国に帰国したバングラデシュ人」を調査対象としていたが、対象者の私的理由の為、調査の遂行は困難と判断した。その後、別の調査対象の選定、さらに先方とコンタクトを取るなど調査実施の実現性の確認に時間を要した。 (2)COVID-19の世界的流行の影響で、2020年2月以降の対象者との対面を要する調査の進行は著しく低下した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新宿の大久保エリアの調査では、エスニック・コミュニティにおける調査を継続する。一方、2019年度において大久保の地元住民に対する調査はやり残した為、今後の課題とする。具体的には、商店会や自治会のメンバーに聞き取り調査を実施する予定だ。 (2)オーストラリア・メルボルンの日本人コミュニティの調査は、今後日本人学校でのインタビュー調査の継続と利用者のアンケート調査の実施を予定している。また、現地の日本商工会議所を通して、「日本企業駐在員と現地スタッフの関係性」を事例として、移民とホスト社会の関係性にアプローチする予定だ。 (3)タイ・バンコクの日本人退職後移住者の調査は、今後、「チュラロンコン大学のアジア研究所」との共同研究の基、現地調査を実施予定である。 但し、以上(1)~(3)は、COVID-19の世界的流行が終息に向かった以降に実施可能となる為、終息以前の状況下では、インタビュー調査等、対象者との対面を要する調査の遂行は著しく困難と思われる。
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Causes of Carryover |
調査計画が当初の予定よりやや遅れたことによって、次年度使用額が発生した。調査計画遅延の理由は、先ず、(1)予定していた調査対象者(元在日バングラデシュ人労働者)に対する調査の遂行が困難となりその後別の調査対象を選定し、先方とコンタクトを取るなど調査実施の実現性の確認に時間を要した。そして、(2)COVID-19の世界的流行の影響で、2020年1月以降に計画していた海外での調査を中止にせざるを得なかった。 次年度の使用計画として、海外でのインタビュー調査に関わる諸経費(渡航費、宿泊費、インタビュー調査対象者の謝礼品代金、インタビューデータのテープ起こし代金など)と海外で行われる学会への参加に関わる諸経費(渡航費、宿泊費など)など、主に海外での調査、研究の為の経費として支出予定である。
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