2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Social Cohesion between Transnational Migrants and Host Society in Japan
Project/Area Number |
19K23255
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大野 光子 立教大学, 社会学部, 助教 (70846203)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 移民研究 / エスニック・コミュニティ / 社会的多様性 / 社会的包摂 / 都市エスニシティ研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的を遂行するため、2020年度において次のような研究活動を実施した。 報告者は2019年度より、新宿の大久保にあるハラルショップにおけるサービスエンカウンターの相互行為分析に着手した。当該エリアにおけるネパール人が経営するハラルショップにおいて、サービスエンカウンターでの店員(ネパール人)と客(日本人を含む多様なエスニシティ)のやり取りを一定期間に渡りビデオ撮影した。この研究は、移民を話者とする第二言語としての日本語が、ホスト社会においてどのように使われまた機能しているのかといった視点から、二者間(移民とホスト社会)の関係性にアプローチすることを企図している。 2020年度は、上記のハラルショップにおけるサービスエンカウンターの相互行為に関するデータの分析作業を遂行してきた。協働して研究を進めている古川敏明氏(早稲田大学准教授)と定期的な研究会(オンライン)を開催し分析視点やデータの特徴の割り出しに注視してきた。また、2020年8月9日と1月24日に行われた大阪大学の岡田悠佑氏(大阪大学准教授)主催のデータセッションにおいて、本データを提供し議論を深めた。 以上のような研究活動を通して、大久保のハラルショップにおける客と店員の相互行為に見られる、ある種の「緩やかさ」や「大久保らしさ」というものが本データの特徴として明確化された。今後、これらの特徴を主な分析対象として、大久保に特有の「緩やかさ」や「大久保性」を明らかにした上で、さらに、移民とホスト社会の「社会的結束性」や「多文化空間」としての大久保の社会の寛容性について考察を深める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度中に渡り、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大が続き、海外で予定されていた全ての調査及び学会参加が中止となった為、研究の進行は著しく低下した。また国内調査においても、調査協力者との対面を要する調査研究は行えず、既に取得済みのデータについて分析や考察を行うのみとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)国内調査としては、新宿の大久保エリアのハラルショップにおける相互行為に関すデータの分析を進め、学会での報告と学会誌への論文投稿を企図する。このような会話分析の手法を用いた調査研究の他、大久保でのフィールドワーク、インタヴュー調査を再開する。特に、大久保の商店会や町内会のメンバーなど、地元住民に対するインタヴュー調査は、今後の課題となる。 (2)オーストラリア・メルボルンの日本人コミュニティの調査は、2020年度に引き続き、日本人学校でのインタヴュー調査の継続と利用者のアンケート調査の実施を予定している。また、現地の日本商工会議所を通して、「日本企業駐在員と現地スタッフの関係性」を事例として、移民とホスト社会の関係性にアプローチする予定である。 (3)タイ・バンコクの日本人退職後移住者の調査は、2020年度に引き続き、「チュラロンコン大学のアジア研究所」との共同研究で現地調査を実施予定である。
但し、以上(1)~(3)を全て計画通りに実施するには、新型コロナウィルスの世界的流行が終息に向かうことが前提条件とされる為、終息の見込みがないままでは、調査者が直接海外に渡航し調査を遂行するのは、著しく困難と思われる。その場合、海外の調査協力者とのオンラインのインタヴュー調査や国内の調査をより充実させる等の対策を講じる予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年2月以降、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大状況が現在まで続いており、海外での調査及び調査協力者との対面を要する調査については中断状態が続いている。また国内の調査としても、著しく限定的な活動しか行えない社会情勢だ。 以上のように、調査活動が著しく制限されたことにより、2020年度における予算の執行率は3割程度に留まり、その為、次年度使用額が発生した。 次年度の使用計画として、海外でのインタヴュー調査に関わる諸経費(渡航費、宿泊費、インタヴュー調査対象者の謝礼品費、インタヴューデータのテープ起こし代金など)と海外で行われる学会への参加に関わる諸経費(渡航費、宿泊費など)など、主に海外での調査、研究の為の経費として支出予定である。
|