2019 Fiscal Year Research-status Report
非再生産型エリートの階層移動-現代フランスにおけるエリート形成要因とその変動-
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19K23265
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
山崎 晶子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (20843866)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 再生産 / エリート / ライフストーリー / フランス / 高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における2019年度の研究実績は主に以下の2点である。 ①パリ郊外のグランゼコール準備学級(グランゼコール受験準備のための高等教育機関)参与観察と生徒や教師に向けたインタビュー調査結果の分析 2019年2月から3月にかけて実施した現地調査のデータのテープ起こしと日本語訳、データ内容の分析を行った。この作業について当初予定よりもやや時間がかかったが、8割ほど終了している。また、この分析結果をもとに、2020年2月から3月にかけて行った現地調査の際に、追加調査として地方のグランゼコール準備学級の参与観察と教師インタビューを行った。パリ郊外だけではなく地方のエリート養成校が、階層の上昇移動にいかなる役割を果たしているのかを知る必要があると考えたためである。この調査結果は2020年度に分析予定である。現状の分析で判明したのは、郊外、地方の学校はパリの名門校とはまた違う役割があり、それは階層脱出、社会的上昇に向けた役割であるということである。 ②非再生産型エリートへのライフストーリー・インタビュー調査 非再生産的な出自を持つエリート10名へのライフストーリー・インタビューの実施 これまでの調査で出会ったエリートと、彼らの紹介により、2020年2月から3月の現地調査において10名のインタビューを実施した。当初の予定では2020年2月と9月、2回の現地調査で10名実施予定であったが、1回目の現地調査で10名実施できた。なお、2月の現地調査の際に、研究代表者と近い研究関心を持つフランスの研究者2名と交流、意見交換ができたのだが、その際により多くデータをとった方が良いとアドバイスをもらったため、9月に更にデータを追加するために現地調査を予定通り行う予定である。2月の調査データのうち3名分は3月末までにテープ起こしと分析が終わっている。残りは2020年4月から随時行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に実施予定の研究計画において、①パリ郊外のグランゼコール準備学級(グランゼコール受験準備のための高等教育機関)参与観察と生徒や教師に向けたインタビュー調査結果の分析:2019年8月から2020年1月実施予定については、現在インタビュー調査や参与観察のデータ分析が8割終了しているが、残り2割がまだ残っている。これに関しては2020年5月末までに完了予定である。 また、この分析結果から地方にある準備学級の役割調査を追加する必要があるとわかり、2020年2月から3月の現地調査で地方のグランゼコール準備学級の参与観察とインタビュー調査を実施した。この分も合わせて2020年5月末には分析完了予定である。 ②非再生産型エリートへのライフストーリー・インタビュー調査:2020年2月、9月実施予定に関しては、2月の調査と合わせて9月にも追加調査を行う予定であったが、2月、3月の1ヶ月の滞在において、想定以上に多くの調査対象者と出会い、この期間で10名のインタビュー調査を行うことができたため、当初予定の10名を達成できた。 つまり、2019年度に実施予定の研究計画としては、上述の通り、分析作業がやや遅れている部分があるものの、インタビュー調査は予定よりも早く進んだため、合わせておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を今後の研究の推進方針とする。 1点目は、非再生産型エリートへのライフストーリーインタビューの継続である。上述した通り、予定していた10名のインタビューは既に終了したが、2020年9月の現地調査において、更に5名の調査協力者を紹介してもらっており、8月末から現地でそのインタビュー調査を行う予定である。 2点目は、これまでのライフストーリー・インタビューと今後実施する追加のインタビューのデータのテープ起こし、分析と、その結果の論文執筆である。2020年4月から随時データのテープ起こしと分析を開始する。そして、得られたデータから、非再生産型のエリート形成要因を明らかにして提示する。その結果を論文として執筆し、2020年9月を目処に、一橋社会科学への投稿、2021年3月締め切りの日仏社会学会紀要、2020年11月締め切りの関東社会学会紀要への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入品の支出が想定より安かったため、少額の使い残しが出ました。少額なので次年度予算に組み込んだ上、計画通り使用することとします。
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