2019 Fiscal Year Research-status Report
社会運動を語る女性たち:台湾ひまわり運動・香港雨傘運動における文化実践を事例に
Project/Area Number |
19K23275
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
陳 怡禎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (30845722)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 趣味共同体 / 女性共同体 / 社会運動 / 台湾 / 香港 / サブカルチャー / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2014年3月に台湾で起きた「ひまわり運動」、9月に香港で起きた「雨傘運動」を考察することを通して、現代社会運動の担い手である若者、中でも特に女性参加者はいかに、自分自身の日常的趣味を用いて社会運動について語り続けているか、さらにその語りを通して、社会運動に意味を付与しているかついて考察することである。平成31年度(令和元年)に実施した本研究の成果について以下のように概要を説明する。 ①第92回日本社会日本社会学会大会にて、『社会運動を語る若者――台湾ひまわり運動・香港雨傘運動を事例に 』というテーマで発表した。また、その発表内容のベースとなる査読論文を同じ題目で『新社会学研究4号 (4)』の公募特集に投稿した。発表や論文において、研究者は、社会運動に参加している台湾や香港の若者がいかに二次創作という彼らの「日常的趣味」を通して社会運動を語るかを考察し、以下の議論を示している:社会運動に参加する若者は、社会運動空間で日常的趣味を実践することを手段として、社会運動の政治的な目的を達成しようとする「外向けの語り」といった側面もあるが、実際に、彼らは自らの日常生活から蓄積してきた好み、価値観やあり方に基づき、社会運動空間のなかでも、細分化された集合的アイデンティティを構築し、「内向けの語り」をより重視している。 ②女子学研究会第47回例会にて、『社会運動空間における「女性の遊び」 』というテーマで発表した。この発表において、研究者はとりわけ台湾の社会運動の女性参加者に焦点を当て、女性は意識的に社会運動空間の中心部ではなく周縁に居場所を確保しながら、その周縁に自らの日常的趣味を実践しようとする文化事象について考察し、以下の議論を示している:女性たちは、戦略的に「私的趣味」を公的領域で実践することによって、趣味縁を中心に結成された女性共同体の可視化を可能にさせている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
台湾や香港での現地調査やフィールドワークを実施する予定だったが、まだに実施できていなかったため研究の進捗状況はやや遅れていると考えられる。 台湾でのフィールド調査は、2020年に1月に実施したが、香港に対する調査は遅れている状況であった。一部のインフォーマントへの調査アポイントメントをすでに取り、それらのインフォーマントとの連絡を継続的に取っているものの、2019年の香港の社会情勢によって、現地入りのフィールド調査はしばらく難航する状況であった。 フィールド調査の実施はまだできていなかった分は、今年度の調査は、①既存の新聞記事②社会運動参加者による活動記録③台湾や香港の社会運動創作物のデータベースアーカイブを考察し、分析を試みた。 以上の理由で、フィールドワークによる一次資料の収集などの進捗状況は遅れていたが、二次資料の収集や整理・分析は研究計画通りに実施できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年に新型コロナの影響が予想されているため、フィールドワーク調査は2020年後半に再開することを目指しているが、最悪の事態を想定した上に、今後の研究の推進方策を以下のように考えている。 ①現地でのフィールドワークは実施不可能の場合、インターネットを活用し、非対面式インタビューを実施する。その際に、インフォーマントから社会運動参加当時の記録(写真や持ち物等)を取り寄せるように交渉を行い、彼女たちの運動参加経験を詳しく分析する。 ②日本や海外での学会発表は実施困難の場合、2019年度に引き続き、既存する新聞記事やアーカイブ等の二次資料を分析し、その研究成果を査読論文として日本や台湾・香港現地の学会誌に投稿する。
|
Causes of Carryover |
計画していた台湾や香港での海外調査は、香港現地の社会情勢によってまだ実施できなかった。また、新聞記事アーカイブなどを利用し内容分析を進めたが、新たなインタビュー資料を得られなかったため、文字起こしなどの人事費用も支出することはなかった。以上の理由で、次年度使用額が生じた。 翌年度分と合わせた使用計画は以下のように考えている。 ①台湾や香港でのフィールド調査を再開し、台湾は一回、香港は二回調査を実施する予定である。また、②調査データの文字起こしを行いながら、インタビューで得た調査データや今年度において実施した新聞記事アーカイブデータに対する考察成果も並行的に論文投稿や日本や海外学会(台湾は二回、香港は一回)発表を実施すると考えている。さらに、③「公的空間における私的サブカルチャー実践」(仮)をテーマに研究会を開催し、サブカルチャーやジェンダー論の視座から議論すると考えている。
|
Research Products
(5 results)