2023 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルメディアを活用した不妊治療を内包する生活の理解と社会的課題の検討
Project/Area Number |
19K23277
|
Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
白土 由佳 文教大学, 情報学部, 講師 (10715816)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 不妊治療 / ソーシャルメディア / ライフスタイル / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ソーシャルメディアのデータ分析とアンケート調査を組み合わせ、不妊治療当事者の日常と治療のリアリティを理解することを通じて、社会的課題を分析した。 先行研究において、不妊治療はその治療特性から当事者が周囲へ気軽に相談できない側面を持つことが指摘されている。このような背景のもと、本研究では匿名や仮名で悩みを吐露できるソーシャルメディアを対象に、当事者の日常生活におけるリアリティや治療の困難について仮説探索的に分析した。 ソーシャルメディアのデータ分析では、不妊治療をテーマとしたブログ記事の分析、SNSの投稿の分析を行った。ブログ記事は不妊治療というテーマに特化した内容が経年で蓄積される傾向にあり、治療方法の段階に応じた困難が感じられていることを示した。ブログ記事の分析を受け、SNSにおける投稿の分析では、プロフィール情報を活用して治療段階ごとにユーザ群を分類し、投稿の分析を行った。SNSでは当事者コミュニティが形成され、そこでのコミュニケーションが日常を支える存在となっていること、周囲に相談しづらい医師とのやりとりにおける困難の共有などが行われていることが浮き彫りになった。ソーシャルメディアの分析から明らかとなった当事者の困難は、Olshanskyらによる生殖補助医療技術当事者の心理的課題と概ね合致し、それらの課題を今日の日本社会という状況のもとでより具体的に理解することができた。 これらの研究成果を踏まえ、最終年度にはソーシャルメディアの分析とアンケート調査の両者を組み合わせ、不妊治療を内包する生活のあり方について検討した。不妊治療は金銭面や治療継続期間に関する選択肢が少なくないことから、当事者の困難は生活と共に長期的視点で捉える必要性が確認できた。
|