2021 Fiscal Year Annual Research Report
高度経済成長期農村における「家事」「育児」の成立過程
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19K23280
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岩島 史 同志社大学, 政策学部, 助教 (30745245)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 家事 / 育児 / 労働 / 家電 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、農村において生産と消費、公私の分離が進み、「近代家族」の要素がみられるようになる過渡期であった高度経済成長期を対象に、「家事」「育児」が成立する過程を、農村における性別分業の(再)構築と女性製の構築の視点から明らかにすることであった。本研究では、(1)農村における「家事」「育児」を外から規定するまなざしとしての政策、調査、マスメディアと、(2)農村女性が種々の労働のどの部分を自らの役割とみなし、どの部分を家電にまかせ、どの部分を「家事」「育児」と表現したのか。そしてそのことは農村女性の主観性をどのように変容させたのかの両面から明らかにすることをめざした。 初年度には、高度経済成長期に限らず、広い年代での農村「家事」「育児」を対象とした調査研究を収集し、1910年代ごろから1970年代ごろにかけての農村「家事」「育児」へのまなざしを分析した。戦前の帝国農会と戦後の農林省関連行政が行った調査と、家政学分野で行われた調査では、「家事」「育児」の対象化のしかたが異 なることがわかった。農村に対する調査のまなざしと、学問分野としての家政学、農村社会学、民俗学などの成立とには深い関係があることが示唆された。 農村女性にとっての「家事」「育児」の構築とその意味については、高度経済成長期に“嫁”世代だった農村女性へのインタビューを予定していたが、新型コロナの影響で、都市部から農村の高齢者を訪ねてのインタビューは難しく、1950-60年代に書かれた農村女性の文集の分析が中心となった。家電製品の導入は農家の性別分業の変更には至らなかったが、すでに過重であった女性労働の可視化には寄与したことが明らかになった。 最終年度には、農村に最も普及していたメディアである雑誌『家の光』における家電の販売戦略についても分析することができた。
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Research Products
(2 results)