2020 Fiscal Year Research-status Report
「メイド」から見る米軍統治下沖縄社会の再検討ー女性史の視点に立脚してー
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19K23281
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
佐草 智久 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10848542)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | メイド / 米軍統治期沖縄 / 家事労動 / 女性労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナウイルス流行拡大に伴い、現地調査が全くできなかった。そのため、これまでの調査で入手した資料等のデータ整理を中心に行った。そこでの成果は『日本オーラルヒストリー研究』第16号(日本オーラルヒストリー学会)に「米軍統治期沖縄メイド研究――職業の実態と社会的役割を中心に」のタイトルで論文として投稿、掲載された。本論文ではG.H.Q.占領下の本土と比較参照しつつ、メイドという職業の実態と社会的役割の変化について考察を行った。 その結果明らかになったことはいかの3点である。まず準公務員待遇だった本土と比べ、沖縄のメイドは個人契約だった分雇用が不安定であり、また福利厚生などの面で劣っていた。2点目に、少なくとも沖縄においてメイドは就労場所によって「家庭メイド」と「兵舎メイド」に大分され、それぞれ業務内容や賃金の水準等、実態が大きく異なっていた。当初は住み込みが主な家庭メイドが求人・求職共に多く、この職業の主流となっていたが、次第に経済成長や助成の雇用機会の拡大などを背景に、若年層の求職者が大きく減少したことに伴い、家庭メイドの求職者は大きく減少した。その際にこれに取って変わる形で急増したのが、通勤で家庭との両立が可能な兵舎メイドが急増していった。3点目に、沖縄社会におけるメイドという職業の社会的役割の変化である。家庭メイドは賃金の他に勤務先家庭から土産物物資をもらい受けることがままあった。これは圧倒的に不足していた終戦直後の沖縄では金銭以上の価値があり、またそれらは、結果としてアメリカの文化をいち早く伝播することにつながった。このような、欧米文化の伝播者としての社会的役割をメイドが担っていた。だがその役割も。経済成長と欧米文化の浸透によって次第に薄れていったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現地に所蔵される資料の発見・整理、及び当事者本人へのインタビューが中心となるため、現地に直接足を運ぶことが不可欠である。だが新型コロナウイルス感染拡大に伴い、今年度は現地に赴くことができなかった。そのため資料調査・インタビュー調査共に実施できなかった。特にインタビュー調査は対象者が高齢者であることもあり、感染リスクの観点から中止せざるを得なかった。だが、そのなかでも、これまで収集したデータをとりまとめ、論文として発表することが出来た。これらの点を踏まえ、コロナ禍でフィールドワークを要する分野の多くが研究の遂行に多大な支障をきたしているなか、ある程度の進捗が見られたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、現在現地調査等が実施出来ない状況である。そのため、同ウイルスの状次第で変更していきたい。次年度早期に終息した場合、当初の計画通り現地調査を行い。沖縄市以外の自治体に在住するメイド経験者への聴き取り調査を実施し、これまでの研究成果を敷衍していきたい。 一方、コロナ禍の終息の見込みが立たず、依然として現地調査が困難な場合、当初の計画を変更しこれまで収集した資料等のアーカイブを中心に行っていく。その成果は資料集など、何らかのかたちでとりまとめたい。その際、必要に応じて、沖縄県公文書館収集資料については同公文書館に利用承諾を得るほか、インタビューの聞き書き等について、聞き取りを行った本人に許諾を得る予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い期間延長申請を行ったため。
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