2019 Fiscal Year Research-status Report
音楽授業デザインへ適用可能な身体技法習得過程モデルの構築
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19K23283
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
田邊 裕子 東京学芸大学, 次世代教育研究推進機構, 助教 (60847911)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 身体技法 / 音楽教育 / 音楽授業 / 民俗芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教師が授業デザインする際の適用可能性を念頭に置きつつ、身体技法習得としての音楽学習過程をモデル化することを目的としている。そのために、身体技法習得に関する諸理論および事例を検討し、モデルのプロトタイプを抽出する。その上で、具体的な実践における身体技法習得過程の分析を通して、モデルの有効性を検討する。本研究は、従来のジャンルに固有の技法習得を目指した学習プログラムではなく、ジャンル横断的に適用可能な「身体技法習得としての音楽学習モデル」を提案することが目的である。そのために、人々が学習過程をどのように組織し展開しているかという視点から中心的に分析し、人的な働きかけや参与者同士の相互作用の効果、環境などの諸条件についても解明することを試みる。 2019年度は、文献調査とフィールド調査を並行して実施した。 文献調査では、身体技法の習得と学びに関する主たる先行研究の収集、およびその特徴の基本的な整理を行った。また、技法習得の過程が確認できる国内外の実践報告例(文献、論文、調査報告、紀要等)を収集し、習得過程を構成する要素の分析を進めている。 フィールド調査では、目黒流貫井囃子保存会の活動に参加し、練習活動の様子を映像・音声媒体として記録した。それらの記録をもとに作成したトランスクリプトや筆者が記録したフィールドノートを用いて、練習内容の決定がどのようになされているか、演奏や表現についての評価がどのように行われているか、指導者やメンバーの関係性が練習にどのような影響を与えているか等について、エスノグラフィの手法による分析および検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査については、主要な文献や先行研究、実践事例の収集が完了し、身体技法習得の諸理論と習得過程の特徴に関する基本的な整理と分類を実施した。 フィールド調査についても、コンスタントに保存会の活動へ参加することができ、分析・考察の材料となる一定量の映像・発話・フィールドノート等の記録を蓄積することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には身体技法習得過程のモデル化を進める。文献調査から得られた分析結果から、先行研究理論や実践事例から習得過程の枠組みを抽出し、確定する。現在の仮説として、身体技法習得の過程は、音楽ジャンルや実践スタイルそのものに条件づけられる要素と、その過程に参与する人々の相互作用によって決定される要素が結びついて構成されていることが示唆される。こうした要素の具体的様相について、フィールド調査によって収集したデータの分析・考察から明らかにする。これらの結果をもとに、身体技法習得としての音楽学習モデルを構築し、得られた知見を学会等で発表する。
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Causes of Carryover |
今年度は調査にかかる旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。来年度は、本年度に録画・録音したデータの文字起こし作業が必要であるため、その経費として使用する予定である。
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