2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル人材を育む多文化共生社会で必要な社会科概念学習の研究
Project/Area Number |
19K23292
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
新谷 和幸 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70846104)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | グローバル人材育成 / 概念 / 探究学習 / 責任 / 概念カテゴリー化学習 / 原爆 / 社会科教育 / 小学校社会科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,社会変化や社会問題につながる「日本と海外で意味内容の異なる概念」に着目し,概念の必要性を実感できる学習方法を活用しながら授業モデルを構築することを目的とする。 2年目となる本年度では,初年度の研究成果を踏まえ,選定した概念のうち責任概念に着目して取り組んだ。 これまでの事前調査を踏まえ,社会倫理学の知見から責任概念の多義的な意味内容を整理し,日本と海外の責任概念の意味内容の違いを分析した。社会倫理学の知見によれば,責任概念の分類・内実から,前者は過去に関する責任と未来に関する責任の2つ,後者は関与責任,負担責任,責務責任の3つに分類されるとされる。後者の関与責任や負担責任と,責務責任では大きく意味内容が異なる。また,日本語と英語の捉え方の違いで考えると,英語のresponsibilityは自律性を含む“応答する能力”として,自らの行動結果による負担責任や役割・職務としての責務責任の意味で用いられ,関与責任の意味を含み込んでいない。そこでこの関与責任を,日本語に含まれる意味内容の特性と捉え,社会倫理学の知見を援用し,責任概念のカテゴリー構造を導き出した。 その後,責任概念に着目し授業化する上で,有効な学習材について検討を行った。これまでの事前研究を生かしながら,広島の原爆投下に対する責任に着目し,原爆に対する責任を巡る日米の捉え方の違いを学ぶ授業を,昨年度検討した概念カテゴリー化学習の学習方法理論を活用し,複数構成した。 他方,本年度までの研究成果を理論と実践を踏まえ論文としてまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における理論的な分析や整理,理論を実証するための授業開発に関しては,昨年度・本年度の2年間で概ね完了している。また,これまでに実践した授業内容を踏まえ,本研究の理論と合わせ論文にまとめ,学会への投稿も行っている。しかしながら,コロナ禍の影響で,本年度は現場での実証的な研究ができなかった。2年間で開発した授業の一部が実践できておらず,そのために必要な費用も計上していただいているため,もう一年研究期間を延長し,十分研究を重ねた上で終えられるよう,上記の進捗状況とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度末,授業実践をお願いしている学校等に出向き,今年度の授業実践の実施の確約を頂いた。対面で授業実践の予定であるが,難しい場合は協力して下さる教員による授業,またはリモートなどでの授業も想定し,授業実践を確実に行う。また,これまでの本研究の成果を,これまでにまとめた論文や本年度の取り組みを踏まえ,ブラッシュアップに努める。
|
Causes of Carryover |
昨年度,コロナ禍の影響により,研究協力者や授業実践校の先生方の本務が多忙となり,具体的な打ち合わせができず,さらに緊急事態宣言や移動の自粛などにより,出張許可が下りず,開発した授業実践も行うことができなかった。そのため,それらに充てていた旅費を使用できなかった。また,授業開発に関する教材の購入や授業データや授業映像の処理に活用するための最新の高性能パソコンの購入など,授業実践の見通しが立たなかったため,それに関連する物品費の購入を控えた。研究の1年延長を申請し,今年度の研究において使用できるようにしたため,「次年度使用額」が生じる結果となった。 昨年度末,研究協力者や授業実践校の所に出向き,研究助言や授業実践のお願いするとともに,出張計画を立てた。授業実践に関しては,対面での授業,もしくは実施校教員の代替授業,リモート授業なども含め,授業実践の確約を得ることができている。物品に関しても,今年度のはじめに授業データや映像を編集可能な最新のパソコンの購入を行い,授業実践に必要な物品を購入する物品費使用の計画も立てた。この1年間で,研究を完了できるように,既に,旅費や物品費の使用計画を立てているので,それに準じて遂行する予定である。
|