2019 Fiscal Year Research-status Report
肢体不自由児者の移動視標に対する位置認知・位置予測特性と眼球運動特性の分析
Project/Area Number |
19K23295
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
松浦 孝明 国士舘大学, 文学部, 准教授 (90845504)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 肢体不自由 / 眼球運動 / 認知特性 / 予測特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
肢体不自由児者は、視力の問題がなくても学習や生活場面において視線活動を苦手とする場合が多く、さまざまな困難を有しているといわれる。本研究は、肢体不自由者の移動する視標に対する視線活動に着目し、移動視標に対する位置認知、および移動視標を遮蔽した場合の位置予測の特徴を明らかにすることが目的である。 2019年度は、①肢体不自由者の位置認知・位置予測特性の評価、および②眼球運動計測装置(アイカメラ)を用いた障害のない成人の眼球運動の分析を行った。①、②ともにモニター上に移動する視標を表示し、タスク1(位置認知課題)として視標の移動中に画面を変色させて変色時の位置を回答させ、タスク2(位置予測課題)として移動視標が画面中央から遮蔽板の後方を移動中に画面を変色させて変色時の視標の位置を予測して回答させた。 ①肢体不自由児者の位置認知・位置予測特性の評価実験は、肢体不自由児者5名を対象とした。位置認知課題において視標が正中から遠ざかるにつれて回答位置が視標位置よりも遅れる傾向が認められた。位置予測課題では、実際の視標位置よりも手前(運動方向と反対方向)に予測し、視標の移動距離の50%程度の位置を回答する傾向があり、また、予測のばらつきが大きい傾向が認められた。②眼球運動計測実験については、障害のない成人2名を対象にタスク1・2実施中の眼球運動をアイカメラを用いて計測した。映像記録のビデオ分析(定性的分析)では、移動視標追視中の眼球運動の先行動作と位置予測課題中にサッカードの繰り返しがみられた。 本研究の結果から、肢体不自由児者の位置認知中の眼球運動に特徴があることとアイカメラのビデオ分析により眼球運動の特徴について一定の評価が行えることが示唆された。今後、眼球運動の評価にはアイカメラの時系列データから眼球運動速度を算出する定量的な分析方法の確立などさらなる検討が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症予防のため被検者を用いた実験を行うことができない期間があり予定していた眼球運動計測実験を計画通り進めることができなかった。あわせて、視線の時系列データから眼球運動速度を算出するなど分析方法の検討に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に実施した肢体不自由児者の位置認知・位置予測特性の評価実験の結果を基に、他のアセスメント方法による眼球運動の評価結果と比較検討を行う。また、現在検討中の眼球運動の分析方法を確立させ、肢体不自由児者を対象とした眼球運動計測実験を行い、移動視標に対する位置認知・位置予測の各局面の特性、および移動視標の追視中と遮蔽後の眼球運動の分析を行う。これらの結果から肢体不自由児者の移動視標に対して多面的な分析を実施する。
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Causes of Carryover |
眼球運動計測実験における補助器具作成に必要な消耗品を選定中であり繰り越しが生じた。繰り越した予算は補助具作成のため消耗品費に充てる予定である。
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