2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後国語科教育の成立過程に関する研究:石森延男の仕事に着目して
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19K23306
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Research Institution | Kobe College of education |
Principal Investigator |
宇賀神 一 神戸教育短期大学, 児童教育学科, 講師 (60850237)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 国語科教育 / 戦後教育改革 / 石森延男 / 学習指導要領 / 教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の目的は、戦後国語科教育の成立過程を解明するため、文部省職員として戦後占領期に国語科教育改革を先導した国語教育者・石森延男の仕事の具体を明らかにすることである。2019年度(1年目)は主に、全国に散在する史料の収集を行った。具体的には、国立国会図書、国内の大学附属図書館、北海道立文学館を中心に、①『学習指導要領昭和二十二年度(試案)』の成立過程を解明し得る史料、②国語副読本『竹』(光村図書出版、1950年・1951年)を収集した。 前者については、1945年の敗戦直後から1947年までのあいだに作成されたと考えられる手書きの文書などを発掘した。後者はこれまで研究に用いられることがなかった興味深い史料である。当初の研究計画では2020年度(2年目)に収集することを予定していたが、刊行から年数が経過しており、所蔵館において廃棄される可能性を考慮して、1年目に集中的に収集することとした。 2020年度は、収集した史料の分析と公表を行う。①の史料類は、『学習指導要領昭和二十二年度(試案)』の成立過程の空白を埋めることが期待されるため、「資料」として早期に公表することを予定している。②は、これまでの研究において取り上げられてこなかった史料であるため、第1にその書誌的分析が必要であり、そのうえで第2に、石森の戦前・戦中の国語教科書編纂の仕事との連続/非連続の検討を行い、学会論文として投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度(1年目)は困難が予想された史料収集を集中的に行い、2020年度(2年目)に収集を予定していた分までをすべて収集完了した。一方で、史料の分析には着手してきたものの、新型コロナウイルスの影響により学会発表の機会を逸し、研究成果を予定したように外部に公表できていない。本年度も関連諸学会の不開催が続くことが予想されるため、学会誌への論文投稿へと切り替え、研究成果の2020年度中の公表を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
史料はすでに揃っており、分析にも着手しているため、学会誌への投稿・掲載を目指して分析をさらに精緻化し、文章化していく。概要のなかでも触れたように、『学習指導要領昭和二十二年度(試案)』の成立過程に関連する資料については、研究史の空白を埋めるものであることから、「資料」として早期に公表することを予定している。国語副読本『竹』については、国語教科書史における戦前・戦中と戦後の連続性を示す貴重な資料であり、国語教育研究者の批評に耐え得るような論文を完成させ、学会にあらたな知見を提供する。
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Causes of Carryover |
2020年度(2年目)に購入を予定していた資料分析のためのパソコンの購入を2019年度(1年目)に前倒しするため、前倒し請求を行った。精算の結果発生した13947円の次年度使用額については、2020年度分の400000円と併せ、資料を補填するための書籍代、文献複写代、学会発表などの研究成果を外部に公表する際の旅費として充当する。
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