2019 Fiscal Year Research-status Report
コンディヤックの教育思想研究―君主教育論と感覚論哲学をつなぐ試み
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19K23328
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Research Institution | Takarazuka University of Medical and Health Care |
Principal Investigator |
中田 浩司 宝塚医療大学, 保健医療学部, 講師 (90846362)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | コンディヤック / 教育思想 / 君主教育論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「コンディヤックの教育思想研究」は、18世紀フランスの哲学者、エチエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック(1714-1780)の君主教育論『パルマ公国王子のための教程』(以下『教程』)を主たる研究テクストとし、その教育思想を明らかにすることである。 2019年度は、採択以後、まず『教程』における歴史研究・歴史研究に焦点を当て、コンディヤックの資料の分析に加えて、従来の君主教育を通史的に研究してきた。このことから、コンディヤック以前の君主教育論においては、歴史とは、今日行われるような史料に対する批判的読解という歴史学研究ではなく、むしろ君主としていかにして振る舞うべきか(道徳)あるいはいかにして統治すべきか(政治)という、実践的な知であったということを明らかにした。いっぽう、コンディヤックの君主教育論においては歴史教育を単なる君主の鏡における道徳や人格の完成や、政治科学、統治術の学習に重点を置くよりも、むしろ歴史を「真理に至るための推測の術」ととらえ、その技術の獲得に重点が置かれていることが明らかになった。本研究については。2020年度の「宝塚医療大学紀要」に投稿予定である。 上記の研究テーマに並行して、コンディヤックの『教程』における文学・言語教育研究を行ってきた。とりわけ、コンディヤックの『人間認識起源論』を精緻に読解しながら、彼の言語思想を十全に理解し、その言語思想ならびに言語観がいかにしてその教育論に反映されたかを分析する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大および海外渡航の自粛のため2020年3月に予定していたフランスでの海外調査を断念せざるをえなかった。したがって、当初計画していたフランス国立図書館での研究・資料収集ならびに現地での専門家との意見交換等が全くできなかった。 しかしながら、制限された状況の中で、研究の主たる課題である①「君主の鏡」の研究および②コンディヤック『教程』の研究については順調に進められている。特に『教程』における歴史教育に関する論考の投稿の準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、以下の課題に取り組みたい。 ①『人間認識起源論』、『感覚論』、『論理学』を連続的に検討 ②コンディヤックの哲学が、その教育論において、いかに反映されているかを実証的に検討 ③フランスへと赴き、前年度に実現できなかった君主教育に関する資料収集
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Causes of Carryover |
2019年度は、予定していた海外調査が、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う海外渡航自粛のため不可能となった。このため、計画を変更し、主に国内での文献調査に従事した。 次年度においてはフランス国立図書館等での海外調査を実施し、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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