2019 Fiscal Year Research-status Report
米国における知的障害教育カリキュラムの確立とその継承・課題に関する研究
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19K23345
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
本間 貴子 国士舘大学, 文学部, 講師 (30845508)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 知的障害教育カリキュラム / アメリカ知的障害教育 / 軽度知的障害児者の職業教育 / 通常教育と知的障害教育の共通点 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は特に1940年代から50年代を中心とする軽度級の「精神遅滞」生徒のハイスクールにおける「精神遅滞」教育の拡大の背景、職業教育の実態を分析した。 その結果、1946年にはハイスクール内に「精神遅滞」学級を設置し、職業教育プログラムを開発していったことが明らかになった。精神遅滞学級の職業教育プログラムの特徴は、職業の技術的なスキルだけではなくソーシャルスキル指導を重視しており、ガイダンス、フォローアップ指導も行っていた。しかしハイスクール段階で「精神遅滞」生徒を受け入れていたのは「精神遅滞」学級だけではなく、実際は通常教育の職業ハイスクールが多くの「精神遅滞」生徒を通常の生徒と共に受け入れていた。その背景には、通常教育のハイスクール内で「アカデミックの学習が足りていない生徒の増加」に伴い、アカデミックな教科学習を中心としてきた従来のハイスクールのカリキュラムの実施が困難になり、職業教育を重視する動向があり、「中等教育学校は、能力や経済的地位にかかわらず全ての若者のニーズに応える教育をしなくてはならない」、「能力の低い生徒にも彼らの満足のいくような職業に就けるようにすべき」という教育委員会の方針があったことが挙げられる。1940年代から1950年代においては、通常教育ハイスクールと「精神遅滞」教育は若者を就労させ社会適応させるという理念と目標を共有しており、さらに、内容・方法においても職業教育や実際的活動の重視といった共通の課題を有しており、このことが「精神遅滞」生徒のハイスクール受け入れ拡大につながっっていた。当該年度の研究により、職業自立を目標に掲げ軽度級の精神遅滞教育が主に検討されていた時代においては、通常教育のカリキュラムと知的障害教育のカリキュラムが共通の目標を設定できていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集、分析、学会における研究成果の発表等、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究により、職業自立を目標に掲げ軽度級の「精神遅滞」教育が主に検討されていた時代(1940~50年代)においては、通常教育のカリキュラムと知的障害教育のカリキュラムが共通の目標を設定でき、教育内容・方法においても共通する部分もあったことが明らかになった。しかし当時は中・重度「精神遅滞」教育をどのようにするかという問題は等閑にされていた。中・重度の「精神遅滞」教育のカリキュラムが、どのように通常教育カリキュラムとの共通の目標・内容・方法を設定できるのか、あるいはそれが難しいのならば、どこの点でいかなる理由で困難なのか、1950年代から70年代に開発されたカリキュラムを検討していく。
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Causes of Carryover |
2020年3月末にニューヨーク州に渡航し資料収集収集調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス渦によりニューヨーク州で入国が制限されることとなり航空券をキャンセルしたため次年度使用額が生じた。資料収集の費用として翌年使用する。
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