2020 Fiscal Year Research-status Report
米国における知的障害教育カリキュラムの確立とその継承・課題に関する研究
Project/Area Number |
19K23345
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
本間 貴子 国士舘大学, 文学部, 講師 (30845508)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 知的障害教育カリキュラム / アメリカ知的障害教育 / 重度知的障害教育 / 通常教育と知的障害教育の連続性 / 知的障害教育の独自性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1940年代から1970年代にかけて開発されたアメリカ合衆国ニューヨーク市の知的障害教育カリキュラムは、障害の程度別に開発されていった。研究2年目は、「重度知的障害児(severely mentally retarded children)」のカリキュラム開発において、当時の教育開発に携わった大学教員・教師・親団体が、通常教育との共通理念と「重度知的障害児」教育における独自性をどのように説明していたのかを整理・分析した。 研究対象は、アメリカ合衆国最大の親の会AHRCの1950-60年代の通学制学校〈Day School)のパイロット事業であり、この事業のコンサルタントを務めたブルックリンカレッジ准教授ローゼンツヴァイグの著書「依存的な遅滞児の理解と教育“Understanding and teaching the dependent retarded child”〈1960年)」、AHRCのパイロット事業をまとめた論文を主に分析した。 分析の結果、「重度知的障害児」の教育プログラムの目的は、子どもの最大限の発達と幸福、子どもがコミュニティと家庭で受け入れられること、生活を広げること、親の自分の子どもに対する適切な理解を助けることであった。プログラムの内容は、身辺自立、家事、他者との関わり、身体運動の発達、生活に必要な文字や数等であった。試行を経てまとめたローゼンツヴァイグの著書(1960年)では、民主主義の実現という意味において「重度精神遅滞」教育と通常教育の大きな教育目的は共通であることが強調され、「重度精神遅滞」児の教育プログラムは「アカデミック」や「職業」にもつながるものとして意味付けがなされた。このように、「重度知的障害児」教育の独自性のみならず、通常教育との共通性を確認することで、それまで教育対象外とされていた「重度知的障害児」の教育的意義を主張したのである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス禍において、ニューヨーク州における実地調査・資料収集およびスウェーデンにおける国際教育史学会における発表が延期となった。国際学会の発表は、2021年度に実施予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度にコロナの影響で延期となった国際学会での発表を予定しており、学会における情報交換及び議論をもとに、研究をブラッシュアップする。 具体的には、アメリカ合衆国ニューヨーク市において開発された「中軽度知的障害児」に対するカリキュラムと、「重度知的障害児」のカリキュラムにおいて、それぞれの教育の独自性と通常教育との共通性がどのように考えられていたのかを分析・整理する。これにより、現代的課題である、「通常教育と知的障害教育のカリキュラムの連続性をどのように実現するか」、「知的障害教育の独自性と専門性をどのように継承していくか」という問いにアプローチする。
|
Causes of Carryover |
2020年度にスウェーデンで実施する予定だった国際学会(The International Standing Conference for the History of Education (ISCHE))が、コロナ禍の影響で2021年に延期となったため、国際学会参加費用を次年度に繰り越すことになった。
|