2019 Fiscal Year Research-status Report
A research with respect to finding the condition for constructing organisational resilience in high schools
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19K23358
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
福畠 真治 国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, 国際調査専門職 (00847626)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 組織レジリエンス / 認知的レジリエンス / 行動的レジリエンス / 文脈的レジリエンス / 高校組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)高校組織における組織レジリエンスに必要な条件・要素を、実際の事例から抽出するための分析枠組みを確立するために、組織レジリエンスに関する諸研究をレビューし、次のようなモデルを構築した。 組織レジリエンスを捉えるために、「組織・チーム・個人」それぞれのレジリエンスを考慮しながら、その相互関係を捉えていくという菊地(2013)の枠組みに立脚した上で、その相互作用の各場面において重要な要素とその相互作用過程をより詳細に捉えていくために、その組織動態をLengnick-Hall・Beck(2005)の「認知・行動・文脈」の軸を用いるものとなっている。具体的には、まず組織レベルにおいて、「組織の選択を支える価値が強固であり、現状を積極的に認知している状態に加えて、安定的な人的・組織的相互関係が成立しており、有形・無形双方の資源へのネットワーク密度が高い」ことが重要である。次にチームレベルであるが、チームのアイデンティティと役割が適切に共有され、頻繁なコミュニケーションやチーム学習を通じて信頼関係とそれを基盤にした支援・協力体制を構築することによって、危機や変化の際にも円滑な情報共有・チーム行動を行うことができる、と考えられる。最後に個人レベルであるが、認知面では「お手本となるモデル教師の存在」・「あらゆる困難に対しての楽観性」が重要であり、それを支える文脈的要素として、「支援的同僚の存在」・「十分な自律性が確保されていること」が必要である。 (2)国内における高校を対象とした組織改善に関する実践研究事例を、文献分析を中心として行い、その結果を上記枠組みを基に整理している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内における高校を対象とした組織改善に関する実践研究事例の収集に関して、想定していたよりも事例数が多いこと、また各種文献の確保に時間を要したことが重なり、その整理が完全には終わっていない。また、本年度の話になるが、実践研究事例を分析していく中で、追加調査が必要な学校がいくつか見つかっているが、昨今のコロナ禍による休校措置等で訪問調査等が非常に困難になっていることから、追加調査がまだ行えていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
実践事例研究の整理を終了させた後、そこで明らかになった高校組織レジリエンスの特徴を踏まえて、実際に2つの公立高校で事例調査を行う。方法としては、①調査対象校の管理職・一般教員を対象とした質問紙調査:組織・チーム(学年・教科)・個人のレジリエンスの状態を測定する尺度を作成する。それを基に予備調査を行った後、探索的因子分析によって学校組織レジリエンス尺度を作成する。そして本調査においてその尺度の妥当性を検証する。②半構造化インタビュー調査:管理職・一般教職員を対象に、継時的インタビューを行い、(1)組織全体でのレジリエンスの現れ方、(2)チームでのレジリエンスの現れ方、(3)個人でのレジリエンスの現れ方、(4)(1)~(3)の相互作用過程の4種類のデータを得る。これに、③会議や授業への参与観察、④校長だより等の学校内資料分析を行う。その上で、学校別要因(対象高校A・対象高校B)と、学校内要因(組織の構成員の違い・学校文化等)という軸を基に、「認知的・行動的・文脈的」レジリエンスと「組織・チーム・個人」のレジリエンスの視点から解釈的分析を行う。その際に、多数の「中堅校」は一見安定した状況で改善動機が持ちにくく、急激な変化に脆弱であるという「中堅校のジレンマ」という観点から、できるだけ一般化に近い形で研究成果を提出することを狙いとし、「高校における組織レジリエンスモデル」を構築することを目指す。 調査が一定程度進んだ段階で、①文献調査によって明らかになった高校組織レジリエンスの諸要素について、国内学会発表、国内論文への投稿、②事例調査の結果(質的な描写と一つの成果である組織レジリエンスモデルの提示)を、国内・国際論文へ投稿、③自身の研究成果を広く公表するための自身の研究に関するHPの開設、を通じて、その成果を社会的に共有・還元していくことも目指す。
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Causes of Carryover |
①国内における高校を対象とした組織改善に関する実践研究事例の収集に関して、想定していたよりも事例数が多いこと、また各種文献の確保に時間を要したことが重なり、その整理が完全には終わっていないこともあり、まだ必要な文献が残っており、その収集のための費用が次年度に回っている。 ②①の遅れに伴い、追加調査が必要な学校への訪問ができておらず、その分の旅費交通費が次年度に回っている。
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