2020 Fiscal Year Research-status Report
For the formation of color emotions, the association between typical colors of emotions and face color in facial expression recognition
Project/Area Number |
19K23359
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 文代 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (00839798)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 色彩感 / 表情認知 / 典型色 / カラービジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、色彩と感情の関連性を、認知心理学的実験課題を用いて検証し、色彩感情を構成する認知心理学的モデルを考案することである。本研究の科学的な意義は、表情やそれに伴う色が色彩感情の成り立ちに寄与しているかを基本表情を手がかりとして、心理学実験データから実証することである。 これまでに色彩と感情の関連性に関するデータの蓄積と、表情判断における顔色の影響に関するデータの再分析と表情の感情価測定実験を行った。1) 色彩と感情の関連性に関するデータの蓄積では、Plutchik(1980)が提唱するより多様な8つの基本感情に基づく24感情について、色彩と感情語の関連について実験を行った。その結果、Takahashi & Kawabata(2018)の結果と共通した傾向が得られた。2) 表情判断実験に関するデータの再分析では、表情判断における顔色の影響は、男女によって傾向が異なることが示された。3) 表情判断における顔色の影響に関連して、各表情の顔色による感情価の変動を調べた。これまでの実験で、怒り、悲しみ、喜び、無感情の表情のそれぞれの表情に関連する色(典型色)と関連しない色(非典型色)を顔色として反応を比較した結果、表情の典型色は表情判断を促進することが示された。この結果から典型色が感情価(受容した感情の強さ)を変動させ、表情判断に影響していると仮定した(例.表情に対する感情価が高ければ、表情判断しやすくなる)。各表情の感情価を調べた結果、同じ表情でも、その表情の典型色は、感情価を高めることが示された。これらの結果から仮説が支持され、感情価と表情判断の関連性が示された。さらに、3)の表情の感情価に関する実験をオンラインで実施し、対面での実験実験結果と比較した。その結果、対面実験とオンライン実験で類似した結果が得られ、オンライン実験を進める指標を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大の状況下にあり、非常勤講師の業務が遠隔や対面、ハイブリッドと多様な状況が常に変遷し、それらの状況に応じるためのアプリケーションの習得と教材の再作成などに予想以上に時間を取られ、研究に遅れを生じた。 具体的には、論文投稿が予定より遅れている。また、実験と分析も予定より進行が遅れ、統計的な検証が完了していないものが複数ある。 実験と分析の具体的な進捗状況は以下の通りである。Ekmanの基本表情よりも多様な基本感情を提唱するPlutchik(1980)の8つの基本感情に基づく24感情について、Takahashi & Kawabata(2018)のカラーパレットを用いて、色彩と感情語の関連について実験を行った。その結果、Takahashi & Kawabata(2018)の結果と共通した傾向が得られたものの、集計方法に不適切な点があり、現在はこれらについて集計方法を再検討している。 表情判断における典型色の効果の実験結果を再分析し、参加者の男女間の比較において、表情判断における顔色の影響の仕方に差異があることが示された。 また、表情判断の実験では、基本表情を典型色と非典型色に着色して表情判断における典型色の促進効果と非典型色の抑制効果について検証してきた。この結果から、典型色が感情価(受容した感情の強さ)を変動させ、表情判断のしやすさに影響していることを予測した。したがって、各表情の顔色による感情価の変動を調べるために、各表情の感情価の測定した。実験結果から、表情の典型色が顔色となる場合に感情価が高くなることが示された。これらの感情価とこれまでに得られた正答率や反応時間との関連性に相関が見られた。また、上述の実験をオンラインにて実施し、類似した結果が得られ、今後の実験をオンラインで行う場合、その結果の信頼性についてある程度確証を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
色彩と感情の関連性については、Plutchik(1980)が提唱する24感情について行った実験結果について適切な集計方法を検討し、統計分析を実施する予定である。新しい集計方法で、同様な結果が得られた場合、Takahashi & Kawabata(2018)が示した基本表情(Ekman,1973)と色彩の関連の調査結果と比較することにより、普遍的な典型色を有する感情と、個人差・文化差の影響が大きい感情について考察する。 一方、表情判断実験では、男女間の比較分析を行った結果、表情判断において顔色の影響の仕方に差異があることが示された。さらに、国籍など他の分類でも比較し、文化的な影響を検討し、表情判断実験における典型色と非典型色の効果(正答率と反応時間)を各表情の感情価と合わせて分析することにより、表情判断における典型色の効果を感情価の観点から考察する論文の投稿を準備中である。 これまでの表情判断実験の結果から、感情ごとに顔色(典型色)の効果が異なることが明らかになった。すなわち、各表情の機能や役割から認知的処理の機序が異なることが推測される。例えば、怒り表情は反応時間が短く正答率も高かったことから、認知的に少ない注意リソースで効率的な処理を行っていることが考えられる。今後は感情ごとの処理特性の違いと色彩の効果との関連も検討する。すでに測定した各表情の感情価をを利用して、表情を提示した時間に対して、どれだけの時間が経過したかを参加者が推定するという方法で、注意リソースや処理の効率性について検討する。例えば、怒り表情のような少ない注意リソースで効率的な処理が行われる場合、提示時間は実際よりも長く感じられるはずであり、典型色により感情価が高くなった場合に、それがより顕著に示されると予測する。このような方法などで得られた結果から、感情の典型色の認知モデルを考案する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大により、参加登録済みの国際学会が延期となり、また、国内の学会もオンライン開催となり、旅費が発生しなかった。また、オンライン実験は外部サーバーを使用しない方法で実施したため、想定していた外注費やそれに伴う経費は発生しなかった。 来年度は、延期となった国際学会は現状では開催予定なので、その出張旅費として次年度に繰り越す。感染拡大が収まらず、渡航が困難な場合は、国際誌への論文投稿の際の英文校正費用、実験機材・ソフトウェアなどの消耗品費(プリンター、プリンターのインク、ケーブル・コネクタ類、ディスプレイなど)に充当する。
|
Research Products
(3 results)