2019 Fiscal Year Research-status Report
動物の認知的柔軟性とレジリエンスの個体差に関する脳内基盤の解明
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19K23378
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上野 将玄 筑波大学, 人間系, 研究員 (20851877)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | レジリエンス / 認知的柔軟性 / 逆転学習 / 恐怖条件づけ / 消去 / 個体差 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスからの回復力(ストレスレジリエンス)には個人差が存在する。本研究の目的は、個々の動物個体のレジリエンス行動特性と認知的柔軟性の関連性を調べ、認知的柔軟性に関与する脳領域に着目してレジリエンス行動特性の個体差を説明する神経メカニズムを検討することで、レジリエンスの個体差を生み出すメカニズムを明らかにすることである。 先行研究を参考に、レジリエンスの指標には恐怖条件づけの消去を、認知的柔軟性の指標にはモリス水迷路を用いた逆転学習課題を、それぞれ採用した。 実験の結果、恐怖条件づけ後、6日間の消去試行によって、フリージング率の低下が確認された。また逆転学習課題では、5日間の初期学習訓練の結果、学習曲線が確認され、逆転学習テストでは、対象象限に関する滞在時間が高かった。よって、恐怖条件づけの消去および逆転学習は成立していたと考える。二つの行動変数に関して相関係数を算出したところ、予想とは異なり負の相関がみられ、消去の速い個体は認知的柔軟性が低い可能性が示唆された。 今年度の実験結果は、レジリエンスの行動特性について新しい見識を提供するものである。しかしながら、先行研究の示唆と異なる結果であるため、結果の意味について慎重に考察する必要がある。 今後、認知的柔軟性に関係する脳部位である眼窩前頭皮質に注目して免疫組織化学法により、神経活動のマーカーであるc-Fosとレジリエンス関連物質とされるニューロペプチドYの発現を定量する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、モリス水迷路による逆転学習課題および恐怖条件づけ実験を行うことを予定していたが、研究代表者の異動や、従来の行動分析ソフトウェアおよびPCが経年劣化による使用不能など、実験環境整備、実験装置の調整や再設定等が必要となり、研究が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通り、行動実験後に灌流固定を行い、脳内c-FosおよびNPY発現レベルを免疫組織化学法によって検討する。また脳内投与実験を計画していたが、これまでに得られた行動実験結果が当初の仮説と異なるものであるため、投与薬物や投与方法の変更を考慮に入れ、免疫組織化学実験の結果を踏まえて実験計画を修正する予定である。
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Causes of Carryover |
年度内に研究機関を二度異動するという予想外の経緯により、実験環境の整備・調整等が必要となり、実験に大幅な遅れが生じた。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、予定していた学会・研究会等が中止になり、次年度使用額が生じた。 2019年度は、逆転学習および恐怖条件づけの行動解析を実施しているが、2020年度は本格的に行動実験後の脳内タンパク発現解析を実施するため、実験動物や消耗品(免疫組織化学法に用いる抗体・試薬など)の購入、および研究成果報告のための国際学術雑誌への投稿費用等に使用を予定している。
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