2021 Fiscal Year Research-status Report
Practice of Return-to-work Program based on Cognitive Remediation.
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19K23379
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
落合 舞子 (川崎舞子) 東京大学, 相談支援研究開発センター, 特任助教 (80844018)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 認知機能 / うつ病 / 認知リハビリテーション / リワークプログラム / 職場復帰支援 / 休職 / 復職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, うつ病などメンタルヘルス不調による休職例に対し, 認知機能障害の回復を目的とする認知リハビリテーション(以下, 認知リハ)を取り入れたリワークプログラムを実施し, その効果を検討することである。認知リハは、これまで統合失調症や高次脳機能障害の患者を対象に発展してきた取り組みであり、うつ病患者を対象とした先行研究はあまり見られなかった。本研究では、統合失調症を対象に行われていたプログラムを参考にしたが、うつ病休職者の特徴に沿うよう、プログラムの内容や実施形態を改変する必要があると考えられた。具体的には、うつ病の症状として集中力や判断力の低下がみられること、認知機能の中でも実行機能の低下が多く報告されていること、目的が症状の軽快だけでなく就労であることなどが特徴であり、それらの特徴に沿うよう、グループワークと個人作業を組み合わせるなど集中しやすい環境に配慮して継続的な参加を促す、プログラム内で行う作業の意義と目的をしっかり理解したうえで進めるようプログラムを構成する、実行機能に関する課題を多く取り入れるなどの工夫を行った。本プログラムは都内の精神科クリニックで実施し、プログラムの前後で認知機能検査および質問紙検査を行った。2020年度までに得られたデータを分析し、2021年7月に国際学会(International Congress of Psychology 2020)で発表した。 2021年度は、健常群(過去3年間精神疾患に罹患していない群)のデータ収集を行い、うつ病休職者と比較することで本プログラムの効果を検討する予定であったが、COVID-19の感染状況により、データ収集が中断した。中断している間は、関連する文献のまとめや、臨床群のデータ分析と考察を中心に進めた。東京都でまん延防止等重点措置が解除された2021年3月より、対面でのデータ収集を再開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は30名程度の健常群に調査を行い、認知機能検査と心理検査のデータを収集する予定であった。調査は貸会議室を利用し、専用の検査器具を用いて対面で行う予定であったため、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている期間はデータ収集を中断せざるを得なかった。2022年4月現在、8名のデータ収集が終了した。2021年度中に実施できなかった調査を継続するため、昨年度に引き続き補助事業期間延長承認申請書を提出し、2022年3月に承認された。 以上の理由から「(4)遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で実施した認知機能検査は標準化されているものの、就労者のみを対象とした先行研究はあまり見られないことや、認知機能自体が加齢による影響を受けやすい機能であること、また、本プログラムは診療の一環として行っているため通院中の患者を対象とした統制群を設定することが難しいことから、臨床群と年齢や性別、就労状況などの属性が類似した健常群のデータを収集し、比較することで本プログラムの効果を検討することとした。今後も引き続きデータを収集し、本プログラムに参加したうつ病休職者と健常群のデータを比較することで、本邦のうつ病患者の認知機能障害に関する知見を得るとともに、本プログラムにより認知機能障害のどの部分にどの程度改善がみられたのかを明らかにしていく。 また、「研究実績の概要」で述べた通り、本プログラムはうつ病休職者への認知リハとして新規性のある取り組みであると考えられるため、プログラムの具体的な実施内容や方法についても論文を執筆し、成果を公表していく。
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Causes of Carryover |
人件費、謝金は主にデータ収集の際に使用する経費であるが、本研究で使用している検査は専用の検査器具を用いるものであり、対面での調査が必須であったため、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている期間はデータ収集を中断せざるを得なかった。また、研究者が2020年度末に出産し育児休暇を取得したことも、本研究が中断した理由の一つとして挙げられる。今後は、対面でのデータ収集を継続し、調査を行う貸会議室の利用料、研究協力者への謝礼、交通費に使用する。 また、2020年度に引き続き2021年度も、国内外の学会がオンライン開催となったため、旅費を使用しなかった。使用については、研究の推進に資する出張のために使用することも検討しているが、今後も感染状況をふまえて柔軟に対応していく。
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