2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a biomarker of mindfulness using respiratory waveform
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19K23381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤野 正寛 京都大学, 教育学研究科, 助教 (90850743)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | マインドフルネス / ありのままに気づく / 生理指標 / 呼吸変動 / ポアンカレプロット |
Outline of Annual Research Achievements |
【意義・重要性】マインドフルネス実践法では、感覚・感情・思考などの経験に対して抑制することなくありのままに気づくことで経験の受容や緩和が進むと考えられている。一方で、経験を無自覚的に避けたり抑制したりしてしまうことで有害事象が生じる可能性も指摘されている。しかし、そのような能力を外部から把握することは難しく、また本人が把握することも難しい。そこで、経験にありのままに気づく能力を客観的に測定できる生理指標が求められている。 【具体的内容】2019年度の研究では、自然な呼吸に注意を向けると呼吸が不自然になるという現象に注目して、自然な呼吸をしている際と、自然な呼吸に注意を向けた際の呼吸変動の差分を用いた生理指標の開発を試みた。実験では、瞑想未経験者40人を対象として、呼吸計測装置を用いて安静時と観察時の呼吸変動を測定するとともに、質問紙を用いて人格特性を測定した。解析では、ポアンカレプロットを用いて安静時と観察時の呼吸変動のばらつきの差分を算出した上で、その差分と人格特性との相関を検討した。その結果、安静時と比べて観察時に、呼吸変動のばらつきが大きいことが示された。また、このばらつきの大きさと、日本版Five Facet Mindfulness Questionnaire(Sugiura et al.,, 2012)の「反応しない特性」との間に負の相関がみられた一方で、セルフ・コンパッション尺度日本語版(有光他, 2014)の「自己批判の特性」や中学生用情動知覚尺度日本語版(石津・下田, 2013)の「情動の注目と分かち合い特性」との間に正の相関が見られた。これらの結果は、安静時と観察時の呼吸変動のばらつきの差分を、経験にありのままに気づく能力の生理指標として使用できる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、2019年度の後期に、呼吸計測装置を用いた安静時と観察時の呼吸変動の測定、質問紙を用いた人格特性の測定、認知課題を用いた情動調整能力の測定を実施し、2020年度前期に、呼吸変動を用いた最適な解析方法の検討を実施する予定であった。しかし、情動調整能力の測定に関しては、先行研究をレビューした結果、情動を抑制しているのか情動をありのままに観察しているのかを明確に把握できる認知課題が開発されていないことが明らかになった。そこで実績では、2019年度後期に、認知課題を実施しなかった。しかし、呼吸変動の測定と人格特性の測定を実施するだけでなく、解析方法の検討まで実施することができた。これらのことも踏まえると、2019年度の研究課題は、おおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に、呼吸変動および人格特性の測定と、解析方法の検討を実施して、本研究において2つの課題が明確になった。1つ目は、実験参加者に、自然な呼吸に注意を向けるように教示した際に、実験参加者が、呼吸に注意を向けるという課題に従事できているかどうかを客観的に判断できないという点である。この点に対応するために、自然な呼吸に注意を向ける条件では、Levinson et al. (2014)を参考にして、呼吸をするたびに、手元のボタンを押す課題を用いることとした。これに対して安静時の条件では、スピーカーから音が呈示されるたびに、手元のボタンを押す課題を用いることとした。これらの課題によって、自然な呼吸に注意を向けている時と向けていない時の呼吸変動を適切に測定できるとともに、どの程度呼吸に注意を向けていたかも適切に把握することが可能となると考えられる。 2つ目は、呼吸計測用バンドを用いた呼吸変動の計測では、実験参加者の肥満度や着ている服の素材などによって、適切なデータが取れない割合が多い場合があるという点である。この点に対応するために、呼吸計測用バンドではなく、呼吸計測用マスクを用いて、呼吸変動の計測をすることとした。また体の動きや咳などの影響を受けにくい、心拍変動も計測することとした。これによって、より精度の高い呼吸変動および心拍変動を測定することが可能となると考えられる。 2020年度は、これらの課題を踏まえて、再度実験を実施することで、精度の高い生理指標を測定するとともに、絞り込まれた人格特性との関係を検討することで、バイオマーカーを特定する予定である。
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