2020 Fiscal Year Research-status Report
係留寸描法を用いた回答バイアス補正のための統計モデルの開発
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19K23382
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高岸 茉莉子 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任助教(常勤) (00842147)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 係留寸描法 / セミパラメトリック / 順序カテゴリカル / 質問紙調査 / リッカート尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
心理質問紙調査において,リッカート尺度のような順序カテゴリカルデータによる質問項目は頻繁に用いられるが,そこで回答者により異質な順序カテゴリの閾値を持つ状況(例:質問項目の内容に関係なく極端なカテゴリを選ぶ)は頻繁に見られる.このような異なる閾値を検知し,補正するための方法として係留寸描法がある.この係留寸描法で得られたデータに基づいて補正する既存の統計手法には,順位変換を元にしたアプローチ,順序回帰モデルを元にしたパラメトリックアプローチなどがある.しかし順位変換はモデルへの仮定は少ないがタイデータに対し扱いづらく,一方パラメトリックアプローチはモデルの識別性を保つために共変量を回答データ,閾値双方に対して設定しなければならず,さらにその上誤差への正規分布も仮定している.そこで本研究では,両者の中間に位置付けられるようなセミパラメトリックアプローチの補正方法を提案した.既存手法では回答者ごとに異質な閾値を共変量を用いることで表現していたが,閾値として回答者ごとに異なる確率変数を用いることで閾値に対する共変量を不要にした.また閾値の確率変数は観測されないものであるが,このモデルを混合効果モデルとして扱いMonte Calro EMアルゴリズムを用いて推定することで効率的にパラメータを推定することができた.また本提案モデルでは潜在変数に対し分布を仮定していないが,ガウス混合分布による分布のノンパラメトリック推定を用いることで,不定性の問題も生じない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度末に提案モデルの概要を変更したことで,進捗は申請時より遅れている.ただ提案モデルとしての新規性は強まった.回答者ごとに異質な閾値の表現として2次元の三角形上に一様に分布する確率変数を考えたが,それをランダム変量として推定するためには乱数生成によるモンテカルロ積分を伴うアルゴリズムが必要になった.これだと計算に非常に時間がかかるため,その高速化させることも今後の課題である.また係留寸描法で補正するための仮定として回答一致性,寸描等価性の2つがあり,本提案モデルではこれを検定方式で実施できるようにすることも検討中である.そのためにはパラメータからの統計量が従う分布も検討する必要があり,現在そちらも合わせて進行中である.このようにモデルの概要,推定方法はほぼ固定できているが,計算時間や,手法の性質などの検討はもう少し時間をかける必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
「進捗状況」のところで述べた.Monte Carlo EMアルゴリズムの高速化と,係留寸描法の仮定(回答一致性,寸描等価性)を検定方式で確認するための,推定量の従う分布を調べる課題が残っている.前者についてはRcppなどを使うことで解決を試みる.後者については,本提案モデルは分布に仮定を置いておらず,ガウス混合分布による密度推定を行なっていることから,局所解に対する性質を検討する必要がある.
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Causes of Carryover |
本来であれば国内・国際学会での報告を通じて様々な先生らと議論をしよい解決策を模索したいと考えていたが,今年度はほとんどの学会がオンラインで行われそれが叶わなかった.1年繰り越すことで,論文を投稿する前に対面で議論できる場面が増えることを期待している.また論文投稿前には英文校閲などにも費用がかかると考えるため,研究進捗がやや遅れているため繰越は必要と考えた.
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