2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of the new polygraph testing method using brain activity data with fNIRS
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19K23389
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
新岡 陽光 中央大学, 研究開発機構, 専任研究員 (50837367)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | fNIRS / 自律神経系反応 / 虚偽検出 / 隠匿情報検査 / 捜査心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の犯罪捜査において実施されている隠匿情報検査(CIT)では自律神経系反応に基づいて、被疑者の当該事件への関与の有無を判定している。本研究では、そのようなCITに脳機能計測法であるfNIRSを併用することで、CITの結果の評価基準の確立および犯罪情報を持つ者の中でも実際に犯罪を実行した者に特有の脳活動パターンの探索することを試みている。 今年度は、主に自律神経系反応と脳活動の同時計測を行うための環境設計を行った。自律神経系反応については生体信号収録装置Polymate V(デジテックス研究所)、脳活動についてはfNIRS計測装置ETG-4000(日立メディコ)を使用する。元々、これらの装置は同時計測を行うことを前提としておらず、同時計測を行うためには、それぞれのサンプリングレートを考慮した上で、実験刺激呈示用PCから電圧信号をそれぞれの装置に送り、適切な形で変換する必要がある。そこで、本研究では, USBデータ収集制御システムLabJack(サンシステムサプライ)を用いて、実験刺激呈示用PC、Polymate VおよびETG-4000を接続して、自律神経系反応と脳活動の同時計測を行う中での、それぞれの装置における刺激呈示時の時間情報を同期させることを可能にした。さらに、模擬犯罪を行わせる中で可能な限り、現実の犯罪捜査に近い状況設計についても検討した。 そのうえで、CITにおける生理反応に影響を与えうる環境要因等について検証し、本研究でのデータ取得のための最適な実験環境を構築した。現在、脳活動に関するCITの研究知見および評価方法に関する研究知見についてのさらなる精査を行いつつ、20名程度の参加者の計測を行い、データ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における主要な目的の1つとして、脳活動と自律神経系反応(心拍、呼吸、汗腺活動)の同時計測によるCITの結果の評価基準の確立がある。これを達成するためには、サンプリングレートの違いをきちんと考慮したうえで自律神経系反応と脳活動の同時計測を行うことが肝要であるといえる。本年度は、この同時計測における適切な生体信号取得および同期のための環境設計を完了させることができたとともに、申請者の所属する研究室における大学院生をはじめとする研究協力者に実験遂行のための情報共有を行うことができた。 また、実際に計測を行い、自律神経系反応と脳活動における刺激呈示タイミング情報の取得が可能であることも検証済みである。すなわち、研究参加者の負担を可能な限り減らし、現実の犯罪捜査場面に近いCIT課題を行なうための実験系を構築することができたといえる。 現在のところ、実際に模擬犯罪を行っていた者とそうではない者の間で異なる自律神経系反応および脳活動が得られることが確認できており、これまでの先行研究と整合する結果が得られている。以上のことを踏まえ、本研究における実験系の構築および仮説を支持し得る結果が得られていることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られているデータについての解析を進めていくとともに、引き続き、模擬犯罪を行った者とそうではない者をリクルートして、CIT中の自律神経系反応および脳活動から識別可能かどうかを検討していく。 さらに、犯罪情報を持つ者の中でも実際に犯罪を実行した者に特有の脳活動パターンの探索という側面についても検討を行っていく。具体的には、模擬犯罪を実際に行った者と模擬犯罪は行ってはいないが事件情報についての知識を持っている者で、異なる脳活動が得られるかどうか明らかにする。CITでは一般的に、被疑者の当該事件に関する記憶・知識に焦点を当てているため、もしも犯人でなかったとしても事件の情報を知っている場合には、自律神経反応は犯人と同様なパターンを示すと考えられている。このことは、CITにおける実施可能性に大きな影響を与えている。すなわち、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの普及に伴って事件についての情報が急速に伝達されやすくなり、犯人以外の者でも当該事件の情報を得ることが容易となった現代社会においては、CITにおける適切な質問セットを用意することが難しくなってきていると考えられる。事件情報について知っている者について、今日の犯罪捜査で用いられている自律神経系反応では検出することができない「当該事件への関与の有無」を脳活動から識別できるかどうかについても、今後検討していく。具体的には、模擬犯罪は行っていないが事件情報を知らされている研究参加者についてのデータも計測し、それを新たな統制条件とみなすことによって、犯罪を行った者に特有の脳活動パターンを探索していく。このことにより、CITにおける質問セットの作成の困難をCITへの脳機能計測法fNIRSの導入によって克服できるかどうかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
Polymate Vの販売会社であるミユキ技研の技術者の方々から多大なアドバイスをいただき、当初想定していた金額よりも安価に、かつ、計測の精度を落とすことなく、実験環境設計を行うことができた。その一方で、消耗品に関しては、当初想定していた以上に消費が早く、費用が掛かることが見込まれた。今後、主に消耗品の購入に充てることで、当初の計画通りの予算合計を使用することを計画している。
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