2020 Fiscal Year Research-status Report
洞察問題解決における無意識的過程と抑制機能の相互作用
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19K23392
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西田 勇樹 立命館大学, OIC総合研究機構, 研究員 (70844306)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 洞察問題解決 / 抑制機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,洞察問題解決と呼ばれる発想の転換を必要とする問題解決の認知過程を抑制の観点から明らかにするものである。本年度では,主に3つの研究を進めた。第一に,洞察問題解決に抑制機能およびマインドワンダリングが与える影響を検討した。マインドワンダリングとは,従事している課題とは無関係な思考の生起である。実験の結果,洞察問題の成績と抑制機能の個人差に負の相関関係が示された。これは,洞察問題解決において抑制機能の弱さは有利に働くことを示唆している。一方,課題中のマインドワンダリングは洞察問題の成績を阻害することがわかった。マインドワンダリングに関する結果は,これまでの先行研究と相反する結果であり,先行研究の結果と洞察メカニズムの再考を迫るものである。 第二に,新しく開発した洞察問題解決の妥当性を検討した。具体的には遠隔連想課題と呼ばれる課題を開発し,遠隔連想課題の成績が他の洞察問題解決の成績と相関するか確かめた。その結果,洞察問題との関連性は見られなかった。しかし,遠隔連想課題は,初期に生成される典型的な誤りを排除する認知過程と関連することを明らかにした。 第三に,文字の流暢性が記憶成績に与える影響についても検討した。これは,文字の流暢性が抑制と関係している可能性を調べるためのものでもあり,洞察問題解決の研究と有機的なつながりがある。実験の結果,文字の流暢性によって記憶の成績が変わることはなかった。しかし,ワーキングメモリ課題成績が高い人と低い人との間で,非流暢な文字に対する記憶の成績に差が見られた。これの結果は,抑制が強い人では記憶すべき中心的情報を取り込み,周辺の無関係な情報(流暢さ)を抑制すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大によって,実験室での実験を断念せざるを得ない状況になった。そこで,オンライン実験に切り替え,心理学実験を実施した。しかし,オンライン実験の参加者は自前のPCを用いて実施するため,参加者ごとの実験機器の性能差や,性能としての限界がある。そのために,閾下で刺激を提示することが困難であった。実験室実験を思うように進めることができなかったことから,進捗は遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,オンライン実験に中軸をおいて実験を実施する。確かに,本研究の遂行には実験室実験が望ましい。そこで,今年度の前半では引き続き,研究概要で述べた研究をオンラインで実施する。後半では,これらの研究の論文化に向けて力点をおく。
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Causes of Carryover |
計画していた実験室での実験をすすめることができなかったため次年度使用額が生じた。延長期間である次年度では実験室実験の実施時に必要となる細かい設備費として使用する予定である。具体的には,実験参加者に利用してもらう文房具,感染対策のための消毒液,PCの予備バッテリー,記入用紙等である。
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