2019 Fiscal Year Research-status Report
実解析と数値計算の手法による流体運動の振る舞いの解明及び数学理論の構築
Project/Area Number |
19K23398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
許 本源 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任研究員 (40844816)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 非圧縮性粘性流体 / Navier-Stokes方程式 / 幾何的正則性 / 竜巻型旋回流 / 渦 / 圧力評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
非圧縮性粘性流体運動を記述するNavier-Stokes方程式に関わるミレニアム7問題の一つ「時間大域的可解性」はほかの問題と比べ純粋数学のみならず、計算科学及び物理現象とも密接に関係しています。その中に解の正則性解析、局所的構造のシミュレーション及び具体現象を考察した結果との比較を行いました。本研究の目的は実際に起きている現象への応用を意識しつつ科学計算で流体運動の振る舞いを考察すること及び数学理論の構築であります。もっと詳しく言いますと「幾何的正則性判定法」など解の正則性及び関連問題の数学解析を行い、その結果を基に数値計算を展開し、成果を上げます。以下研究内容及び成果を纏めます。 1.現在に至ってミレニアム問題に対して、爆発が起きないための十分条件が調べられた結果は様々ありますが、その多くは速度など特定な量が小さければ爆発しないと言った条件であります。それに対して、Fefferman氏が3次元全空間で「渦度の方向が空間変数に対して、一様に連続であれば、たとえ渦度が大きくても爆発しない」という幾何的正則性判定法と言われる判定法を提唱しました。この判定法を一般領域で粘着境界条件の場合に示すのは全空間の場合と比べると更なる多くの付帯条件が必要でありました。にもかかわらず、本研究は代表者らの半空間における先行研究のふくらまし法を活用し、さらに圧力評価を完成したことによって、有界領域における幾何的正則性判定法を全空間と同じ仮定の下で構築できました。 2.竜巻型旋回流については非軸対称な初期速度、非軸対称領域などより実現象を反映させる設定の下でシミュレーションをし、旋回によって形成された低圧力領域に着目して、軸対称の場合には起こらない現象を観察できました。地形がどのように旋回の流れに影響を与えているかという問題の解明に、物理及び工学の分野からの手法と異なるアプローチができました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に提案したプロジェクトの中、二つの項目「非圧縮Navier-Stokes方程式の解の正則性の解析」及び「竜巻型旋回流の局所的な構造のシミュレーション」においてはそれぞれ進展がありました。解の正則性については「有界領域で幾何的正則性判定法」を構築できて、ほかの一般領域についても圧力評価の構築に着目して考察しています。竜巻型旋回流については非軸対称の場合に必要な計算領域のマッピング手法が開発され、竜巻の現象にとどまらず、今後血流などの現象に応用することも期待できます。より合理的な初期速度の考案及び、初期速度による影響と安定性などについての考察も準備ができました。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は数学解析を活用して数値シミュレーションを統合的に協働し真の力を発揮することが目的であります。そのため、シミュレーションは実現象に合わせ、合理性を考慮し、数学解析ができるような初期速度を導入することがこれからとても重要な課題となります。 数学解析の方について、研究代表者らの先行結果においても、「幾何的正則性判定法」の局所化した新しい文献においても、圧力評価の導出が証明のカギになっています。一方、竜巻型旋回流の考察において、低圧力領域の形成など圧力の構造が重要な役割を担っています。これから圧力の構造に対する考察は新しい知見へ導くと思っております。
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Causes of Carryover |
当初の計画は交付決定後に前半は研究に必要な備品、消耗品を購入し、後半は研究成果の発表及び研究打ち合わせを予定していました。後半の一月に入ってから、新型コロナウイルスの初期影響によって海外の研究出張は見送りました。国内の研究出張も予定より短縮するように計画変更をしました。そのため、次年度の使用額が生じました。 翌年度の使用計画についてですが、科学シミュレーションに必要な備品、消耗品、参考書類などの購入及び新型コロナウイルスが落ち着いてから研究成果の発表及び研究打ち合わせするための出張経費などに使う予定です。他には論文投稿、印刷するための経費、新型コロナウイルスに対する政府、大学の政策に合わせ、自宅研究、遠隔打ち合わせをより効果的に行うための機材なども想定しています。
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