2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23405
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩崎 悟 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教(常勤) (00845604)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | グラフ上の偏微分方程式 / 放物型偏微分方程式 / 角域作用素の分数べき / 無限次元力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフ上の偏微分方程式は数学的には,各辺上での偏微分方程式と各頂点上での接合条件の連立した問題となる.グラフ上の準線形放物型偏微分方程式の場合は「非線形項を評価するためのノルム空間を決定すること」と「接合条件を満たす解を構成すること」が難しく,解を構成してその解の挙動を調べるという研究には到達していない.そこで本研究課題では,グラフ上の微分作用素の分数べきの理論を活用して上記の難点を解決して,グラフ上の準線形放物型偏微分方程式を解析的に研究することを目的としている.特に,[a]分数べきの理論を用いた準線形放物型偏微分方程式の局所解の構成,[b]定常問題(連立常微分方程式と接合条件の組み合わせ)の解析,[c]適当な非線形性の仮定での時間大域解と定常解の関係性の解明,という三つの研究目的を設定して研究を遂行している.2019年度には特定の準線形放物型偏微分方程式に焦点を絞り,角域作用素の分数べきを用いた局所解の構成,ア・プリオリ評価を用いた時間大域解の構成,リアプノフ関数のLojasiewicz-Simonの不等式を用いた時間大域解の定常解への収束を証明しており,その結果は国際論文誌に採択された. また,グラフ上の偏微分方程式の数値計算も進めており,解析的研究だけからは見えにくい特徴的な解の調査なども進めている.まだ発表には到達していないが,グラフ上の進行波など特徴的な解は数値的に見つかっており,解析的研究も交えて論文として発表することを目指している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究においては,準線形放物型偏微分方程式に分類されるKeller-Segel方程式のグラフ上の問題を取り扱った.具体的には角域作用素の分数べきを用いた局所解の構成,ア・プリオリ評価を用いた時間大域解の構成,リアプノフ関数のLojasiewicz-Simonの不等式を用いた時間大域解の定常解への収束を証明した.この結果は査読付き国際論文誌Nonlinear Analysisにオープンアクセスで掲載されている.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究においては,2019年度に行ったKeller-Segel方程式の研究を抽象的なレイヤーに落とし込み,一般的な準線形放物型偏微分方程式の解の構成の研究に発展させる.最終的には交付申請時に目的としていた[a]分数べきの理論を用いた準線形放物型偏微分方程式の局所解の構成,[b]定常問題(連立常微分方程式と接合条件の組み合わせ)の解析,[c]適当な非線形性の仮定での時間大域解と定常解の関係性の解明,という三つの研究目的を達成することを目指す. また,グラフ上の偏微分方程式の数値計算も進めており,解析的研究と数値的研究を同時に進めて相互補助的な発展を目指している.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により,3月に予定していた旅費や物品などの費用が2019年度中に仕様ができなくなった.繰り越した額は2020年度にすでに得られた研究成果の発表や,新たな研究成果の発表のために充てる予定をしている.しかし,コロナウイルスの影響が続き,研究会がオンライン会議での開催が続く場合は旅費の費用が不要になるため,旅費は物品やその他の費用に割り当てる計画である.
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