2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on limit theorems for random walks on covering graphs
| Project/Area Number |
19K23410
|
|---|
| Research Institution | Ritsumeikan University |
|---|
Principal Investigator |
難波 隆弥 立命館大学, 理工学部, 助教 (20843981)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
| Keywords | 被覆グラフ / 結晶格子 / 離散幾何解析 / 中心極限定理 / エッジワース展開 / 多次元多重オイラー積 / 複合ポアソン分布 / ランダムウォーク |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き被覆グラフ上のランダムウォークに関して「ランダムウォークの非対称性」、「被覆変換群の非可換性」、「極限過程の不連続性」のキーワードの下で多角的に研究を行い、以下の成果を得た。
(1) 前年度にベキ零被覆グラフ上の非対称離散推移半群に関してエッジワース展開が可能であることを示した。今年度はさらにエッジワース展開の係数をheat kernel measureによる積分により具体的に与えた。
(2) 有名なTrotterの半群収束定理はベキ零被覆グラフ上の非対称ランダムウォークの中心極限定理を示す際に重要な役割を果たした。ある条件下ではTrotterの半群収束定理の詳細な誤差評価が知られていたが、ベキ零被覆グラフ上の離散推移半群に対するBerry-Essenn型評価(誤差評価)はその誤差評価からは従わずより一般の状況下での誤差評価の一般論が必要であった。今年度はこの拡張についても考察し、極限半群に関する自然な仮定を置く必要はあるものの、一般の場合にまで誤差評価を拡張することに成功した。
(3) 前年度に引き続き多次元多重オイラー積なる新たなゼータ関数を結晶格子上で定義しその確率論的性質を調べている。今年度はこの研究に関連して、ゼータ関数が導く最も基本的な確率分布であるRiemannゼータ分布の挙動に関して、青山崇洋氏(岡山大)及び大学院生の大田絋己氏(岡山大)と共同研究を行った。本年度は特にRiemannゼータ分布の特性関数の原点近傍の詳細な上下からの評価を得ることができた。
(4) 有限グラフ上の熱核に関して大学院生の九保佑匡氏(立命館大)と共同研究を行い、固有値を4個もつ有限2部グラフ上の熱核の非対角成分と対角成分の比が時刻の関数として単調増加であることを示した。
上記(1)、(2)、(4)の結果については、既に論文の形にまとめられ各々学術誌へ投稿中である。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はべき零被覆グラフ上のエッジワース展開に関して一定の目標を達成することができた点は大きかった。また思いがけずTrotterの半群収束定理の誤差評価を一般の設定下にまで拡張できたこと、さらにはゼータ分布に関する研究や有限グラフ上の熱核に関する研究についても想定以上の進展が見られたこと等を総合して、研究は当初の計画以上に進展していると判断する。その一方で我々が定義した結晶格子上の多次元多重オイラー積の確率論との関連については、大きく見直しを要する点もあるため引き続き慎重に議論を進めたい。
|
| Strategy for Future Research Activity |
本年度に示したRiemannゼータ分布の特性関数の原点近傍の上下からの評価を基礎に、次年度はRiemannゼータ分布の畳込の詳細な漸近挙動を得ることを目指し共同研究を続ける。また可能であればその多次元多重化についても議論を始めたい。また結晶格子上の多次元多重オイラー積から生成されるランダムウォークの極限定理に関しても考察を始めたい。一方で、可解群を被覆変換群とする被覆グラフ上のランダムウォークについては少々進展が遅れているため、関係者からの情報収集、文献調査を積極的に行う予定である。
|
| Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により予定していたコーネル大学(アメリカ合衆国)への出張が中止となり, 研究計画の変更を行わざるを得なかった。次年度の新型コロナウィルス感染状況に応じ出張を行う予定であるため、渡航に係る旅費としての執行を計画している。
|
Research Products
(3 results)
