2019 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータ解析に応用可能な高連結度グラフの構成に関する微分幾何学的研究
Project/Area Number |
19K23411
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
山田 大貴 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (00847270)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | リッチ曲率 / 単体的複体 / 幾何解析 / グラフラプラシアン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では,研究目的の一つである「リッチ曲率を用いたグラフの連結度に関する不等式評価を得ること」を達成するため,以下の2つの研究成果を公表した. 1.単体的複体上のラプラシアンに関する固有値評価:グラフの一般化である単体的複体上に定義されるラプラシアンの固有値に対し,これまでの結果よりも一般化した不等式評価を得ることに成功した.具体的にはまず,単体的複体上に新たな確率測度を与えることで,グラフ上のリッチ曲率を単体的複体上へ拡張した.次に,本来単体的複体上のラプラシアンは単体的複体の向きに依存するが,正則な単体的複体を考えることで向きづけを固定できることに注目し,単体的複体上のラプラシアンを単純な形へ変形した.こうした手順を踏むことで,これまでの証明方法を踏襲することができる.これは次年度の「高連結度グラフの構成方法の確立」に大きく貢献する.また,本研究成果は現在国際雑誌に投稿中である. 2.グラフ上のリッチ曲率に関する幾何解析的性質:東北大学材料化学高等研究所の小澤龍ノ介氏と櫻井陽平氏らと共同研究を行い,有向グラフに対して,ラプラシアンの比較定理やラプラシアンの一般化であるp-ラプラシアンに対して固有値評価を得ることに成功した.有向グラフ上の距離は非対称であることから,無向グラフに対する定理を拡張することは難しいと考えられていたが,グラフの各点上に非対称な平均曲率を定義することで,これまで不等式評価できなかった箇所を評価することができた.これは次年度において,高連結度グラフの再構成ができなかった場合の対応策である「幾何解析的手法を用いた単体的複体上のラプラシアンの固有値と連結度との関係式」を明らかにする際重要な役割を果たす.本研究成果は現在国際雑誌に投稿中である. また,これら上記の研究成果について幾つかの研究集会やセミナーで公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り,リッチ曲率を用いたグラフラプラシアンの固有値の不等式評価を単体的複体上へ拡張することに成功した.もし拡張できていなければ,オイラーグラフやハミルトングラフといった有向グラフを用いた大域的に与えられる向き付けを用いて単体的複体上のラプラシアンを再度変形するところから始めなければいけなかったため,拡張に成功したことは本研究課題が順調に進展していると言える.加えて,次年度の対応策として挙げていたグラフの幾何解析的性質についても進展したため,次年度への研究にも順調に繋げることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で一般化された研究成果を統合し,本研究の目的である高連結度グラフの構成方法を確立し,その構成方法がビッグデータの効率的解析を可能にしているか実データを用いて検証する. 具体的には,「単体的複体上のラプラシアンの固有値との関係を示す際に用いるチーガーの不等式」と「単体的複体上のラプラシアンの固有値と正のリッチ曲率との関係式」から,リッチ曲率と連結度との関係を明らかにし,高連結度グラフを再構成する.再構築できなかった場合は,グラフラプラシアンと連結度を示した関係式から,チーガーの不等式を使わず,前年度で得られたリッチ曲率の幾何解析的性質を用いて単体的複体上のラプラシアンの固有値と連結度との関係式を得る. 加えて,実際のデータに対して,本研究成果を応用し,その結果を準備期間で得た先行研究の結果と比較することで,効率的に高連結度グラフを再構成できているかを検証することによって本研究を総括する.
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Causes of Carryover |
本年度12月~3月までの間に予定されていた国内外の出張が全てコロナウィルスの影響で中止になったため,旅費が本来の金額を大きく下回ることとなった.延期になった研究集会もあるため,そうした研究集会に参加することで翌年度使用していく. その他として計上していた英文校閲費に関しては,本年度,総合地球環境学研究所の研究成果発表支援金より支出したため,0となった.現在,執筆中の論文が2本あるため,翌年度は本年度の金額も合わせて英文校閲費として使用する.
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