2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23414
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
LUSTIKOVA JANA 東北大学, 先端スピントロニクス研究開発センター, 助教 (90847964)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 / 銅酸化物 / スピン流 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は高温超伝導物質におけるスピン注入・スピン伝搬をスピントロニクス手法によって実験的に実証することである。得られた知見によって高温超伝導体におけるスピン励起の理解を深めることを目指し、高温超伝導材料の超伝導発現におけるスピン励起の役割解明への貢献及びスピン流を用いた超伝導特性の制御を期待する。 本目的を達成するために、本年度は、(1)室温から低温領域まで超伝導体へのスピン注入を可能とする実験環境の立ち上げ及び測定試料の作製、(2)マイクロ波及び電気測定を用いた銅酸化物高温超伝導体のスピン輸送実験を行った。以下ではこれら2つの成果の詳細を述べる。 (1)300 Kから10 Kまでの広い温度領域においてマイクロ波を用いたスピン注入実験(スピンポンピング)を可能とする導波路設計及び磁性薄膜の強磁性共鳴の観測に成功した。実験環境を整えた上で、バルクの銅酸化物超伝導単結晶と強磁性薄膜のヘテロ構造を作製し、単結晶の上で成膜された強磁性薄膜でも磁気性質は保たれていることが確認できた。 (2)上記のヘテロ構造において、室温から低温までマイクロ波を用いたスピン注入実験を行い、高温銅酸化物超伝導材料へのスピン注入の観測に成功した。また、磁性基板上に成膜された銅酸化物高温超伝導単結晶薄膜において、常伝導状態において磁性基板の磁化に応答する電気抵抗の変化の観測に成功した。系統的対照実験によって、これは金属膜では観測されないことを示し、銅酸化物薄膜の電子バンド構造を反映することを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、高温超伝導物質におけるスピン注入・スピン伝搬現象の温度依存性及び磁場依存性を系統的に測定可能な実験基盤を整え、予備実験を行った。更に、銅酸化物超伝導材料の薄膜において電気特性が近接環境の磁気特性によって変調する輸送現象の観測に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した実験系を利用し、銅酸化物高温超伝導物質にとどまらず、鉄系超伝導物質においてもスピン注入実験を行う。温度依存性や組成依存性における相違点に注目し、また、スピン励起伝搬距離を評価することによって電子相図上のスピン注入・スピン輸送現象のマッピングを行い、高温超伝導スピン励起物性を探索する。
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