2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23418
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥山 真佳 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (60844321)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 量子スピングラス / 最適制御理論 / 量子アニーリング / 古典スピングラス / 相関不等式 / 確率微分方程式 / 幾何ブラウン運動 / 横磁場SK模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子アニーリングを用いてスピングラス模型の基底状態を効率良く求めるためには、量子揺らぎがスピングラス模型の解構造に与える影響を理解することが不可欠である。横磁場Curie-Weiss模型や有限パターンのHopfield模型などの平均場量子スピン系では静的近似の厳密性が最適制御理論を用いて証明されている一方で、横磁場Sherrington-Kirkpatrick(SK)模型では静的近似が破綻することが知られている。 この研究計画の目標は横磁場SK模型を最適制御理論を用いて解析することであるが、横磁場SK模型ではレプリカ法の影響により、虚時間方向に長距離の相互作用が生じるため、最適制御理論を適用することが出来ない。 そこで、研究計画の一年目では横磁場SK模型を変形した模型を解析することに集中した。変形された横磁場SK模型には虚時間方向に最近接相互作用しか存在しないため、多体相互作用する確率微分方程式と等価であり、最適制御理論を適用して解析を行うことが可能である。まずは静的近似の仮定の元でレプリカ法とハバード・ストラトノビッチ変換を組み合わせることにより、この模型の自由エネルギーの解析を進めている。これについては現在論文を準備中である。また解析の過程で、行列値幾何ブラウン運動の自由エネルギーの厳密解を導出した。行列値幾何ブラウン運動は一般には解けないと考えられてきたが、我々はレプリカ法によって時間発展演算子を量子スピン系の平均場模型であるLipkin-Meshkov-Glick模型の分配関数にマッピングすることにより、いくつかの非自明な量に対する厳密解を求めることに成功した。これについて現在論文を準備中である。 また、当初の研究計画にはなかったが、古典スピングラス模型における相関不等式の研究にも着手し、いくつかの物理量に対して非自明な不等式を導いた。これについて現在論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の目的であった横磁場SK模型の解析自体は満足に進んでいない。一方で、変形された横磁場SK模型の解析や、行列値幾何ブラウン運動の厳密解など、研究計画当初は予期していなかった成果という意味で期待以上の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は確率微分方程式に対する最適制御理論を用いることにより、変形された横磁場SK模型において静的近似が厳密であるか否かを調べることを目標とする。これにより、量子ノイズが変形された横磁場SK模型に与える影響を明らかにする。 また、古典スピングラス模型における相関不等式の研究も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、国内、海外出張が急遽中止となってしまったため、また論文投稿が予定より遅れており、論文掲載費として予算を使用しなかったため、大幅な次年度使用額が生じた。使用計画としては、現在査読中の論文の論文掲載費として主に使用する。
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