2019 Fiscal Year Research-status Report
実験とシミュレーションによるラジウムの粘土鉱物への吸着構造の解明
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19K23432
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山口 瑛子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (80850990)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ラジウム / X線吸収微細構造法 / 粘土鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、放射性元素であるラジウム (Ra) が、環境中の重要なホスト相である粘土鉱物に吸着する際のミクロな構造を、実験とシミュレーションの両方から明らかにすることを目的としている。 実験ではX線吸収微細構造 (XAFS) 法による測定を予定しているが、Raが安定同位体を持たず、また比較的高濃度の試料が必要なために、測定のための許可申請、試料の確保や容器の準備等が課題であった。本年度は、東京大学やSPring-8等と密な連携を行い、Raの密封線源に関する様々な許可申請を行うと共に、Ra試料や粘土鉱物、容器等の確保を行った。また、Raと挙動が似ているバリウム (Ba) についてXAFS法を適用し、様々な吸着条件下での粘土鉱物への吸着構造を解明した。その結果、Baは吸着濃度が異なると吸着構造が異なり、さらにX線吸収端近傍構造も変化するという結果が得られた。これはRaの測定と解析に際して重要な知見である。 一方シミュレーションでは、粘土鉱物の特徴の一つである同形置換のために、モデリングにおいて置換原子の配置の組み合わせに関する恣意性の問題がつきまとう。そこで、単純な組成の粘土鉱物に対して、異なる置換原子の配置を持つ24種類のモデルを作成し、剥離エネルギーを計算した。複数の粘土鉱物に対して計算を行い、エネルギーを比較した結果、置換原子の配置が剥離エネルギーに大きな影響を与えることが明らかになり、今後の粘土鉱物へのシミュレーションの結果を考察する上で重要な知見が得られた。さらに、層間の水和状態を明らかにするため、溶液理論モデルを用いた手法のテスト計算も行ったが、層間の水分子の再現は難しいことがわかった。このことは粘土鉱物の層間の水分子が溶液中の水分子とは大きく異なることを示している。 これらの成果について国際学会で報告予定であり、国際学術誌へも投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験については、許可申請中の取得見込み時期も踏まえて試料作製や測定の明確な予定を立て、計画通り進行中である。シミュレーションについても機械学習を用いた手法に必要なデータを取得できており、計画通り進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験については、現在申請中である密封線源等に関する許可を取得後、吸着試料の作製と輸送、測定を行う。コロナウイルス感染症による施設閉鎖のため、2020年度前期は予備実験を含めた測定が難しく、2020年度後期での測定を予定している。シミュレーションに関しては、今年度の結果を基に機械学習を用いた分子動力学法による計算を行い、Raの粘土鉱物への吸着構造を解明していく。実験とシミュレーションの結果を相補的に利用し、総合的な解釈を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症による打ち合わせ・実験の延期のため旅費や実験費用等が安く済んだことから次年度使用額が生じた。生じた差額は延期された打ち合わせや実験に充てる予定である。
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Remarks |
17th International Conference on the Chemistry and Migration Behavior of Actinides and Fission Products in the Geosphere (Migration 2019)での発表においてBest Poster Awardを受賞。
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Research Products
(1 results)